[I-S04-01] 『ASUKAモデル』と学校における”救命教育(BLS教育)”の重要性
キーワード:救命教育
学校管理下における児童生徒の死亡事故は減少傾向にあるが、死因は突然死が圧倒的に多い。学校は児童生徒、教職員等が密集している場所であり、学校内で人が倒れれば、目撃者がいる確率は極めて高い。したがって、児童生徒に適切な教育を施し、かつ教職員が適切な訓練を受けていれば救命の可能性が高くなる。さいたま市において、平成23年に起きた小学校6年生女児死亡事故への教訓を生かして作られた事故対応テキスト『ASUKAモデル』は、JRC蘇生ガイドライン2015のBLSアルゴリズムを先取りする内容で緊急時の「判断・行動チャート」を定めたものである。作成に併せて、市教育委員会と市消防局は協力体制を強化し、教職員研修の強化はもとより、小学校からの体系的な救命教育(BLS教育)を正式カリキュラムとして、その指導者を教員が担うことで学校の安全度を高めようと取り組んできた。その成果は、以後学校内における児童生徒の突然死は発生せず、教職員等の複数の救命事例が生まれるなどの形で表れている。一方、全国的に見て、学校での突然死に対して教職員の対応が適切であったかが問われる事例は続いて発生しており、中には訴訟に発展する事案もある。反対に、救命事例においては児童生徒が重要な役割を果たすことも明らかになってきている。筆者は『ASUKAモデル』の普及活動に取り組む中で、講義・講演等参加者を対象にアンケート調査を行ってきたが、そこからは、教職員の多くは救命講習を受けていても緊急時に自分が適切に行動できるかどうかについて不安を持っており、単にスキルを施すだけの救命講習では足りない現状が見えてくる。こうしたことを踏まえ、学校での突然死ゼロを目指す上での課題について報告する。