[I-YB01-04] Fontan患者におけるpulmonary vasodilatorと血行動態
キーワード:Fontan, 肺血管拡張薬, 肺循環
【背景と目的】近年Fontan患者にpulmonary vasodilator(PVD)を投与することが多くなっているが、その評価は定まっていない。今回、PVDを内服しているFontan患者の血行動態を調べた。【方法】対象は2010年~2017年にFontan後の定期心臓カテーテル検査を施行した12才未満の195人。PVDを内服しているPVD群(78人)と投与され内服していない非PVD群(117人)に分けて、心機能、肺循環因子を比較した。【結果】PVDの内訳は単剤が71人(PDE-5阻害剤48、PGI2 21、ET受容体拮抗剤2)、2剤以上7人。PVD群が有意にcoil塞栓術を有意に多く施行されていた。心機能ではPVD群の方が有意に、NT-proBNP高値(>360 pg/ml)例が多く、拡張末期容積が大きい(>120%)例が多かった。またPVD群の方が肺動脈楔入圧(7.4 vs. 6.0 mg: p=0.00028)、心室の拡張末期圧(8.0 vs. 6.9 mmHg: p=0.016)が高く、大動脈の酸素飽和度は有意に低かった。心不全治療薬では、PVD群の方がACEI/ ARBの内服率は有意に高かったが、enaraprilの内服量は両群間で有意差がなかった(0.21 vs. 0.20 mg/kg)。両群間で、βブロッカーの内服率、carvedilolの内服量(0.34 vs. 045 mg/kg)に有意差はなかった。肺循環では、PVD群の方が肺動脈indexは有意に小さかった。両群間で、肺血管抵抗値、中心静脈圧に有意差はなかった。fenestration はPVD群の方が多く施行されていた(60% vs. 19%;p<0.0001)。PVD群をfenestrationの有無で分けると、fen有りのPVD (+)の中心静脈圧はPVD (-)群と同等(11.7 vs. 11.8mmHg)であったが、fen無しのPVD (+)群の中心静脈圧(13.2 mmHg)はPVD (-)群より高かった(p=0.012)。【結語】今回は肺血管拡張薬だけでFontan術後の肺動脈圧を下げていることを示すことはできなかった。PVD群では、心機能低下による後負荷上昇により中心静脈圧が上昇している例が多いことが示唆された。そのような例では心不全治療も強化した方が良い。