第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望演題

会長要望演題02(I-YB02)
小児循環器領域の社会貢献・国際協力

2018年7月5日(木) 17:30 〜 18:30 第5会場 (304)

座長:城戸 佐知子(兵庫県立こども病院 循環器内科)
座長:檜垣 高史(愛媛大学大学院医学系研究科 地域小児・周産期学)

[I-YB02-04] 小児先天性心臓血管外科循環器科領域でのJICA草の根プロジェクトによりベトナム社会主義共和国における医療技術支援

新井 禎彦1, 小谷 恭弘1, 黒子 洋介1, 堀尾 直裕1, 川田 幸子1, 笠原 真悟1, 大月 審一2, 馬場 健児2, 岩崎 達雄3, 佐野 俊二4 (1.岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科, 2.岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児循環器科, 3.岡山大学大学院医歯薬学総合研究科麻酔蘇生科, 4.カリフォルニア大学サンフランシスコ校)

キーワード:心臓血管外科, 国際貢献, 医療技術支援

【目的】我々は2011年度からJICA草の根協力事業の枠組みでベトナムにおける先天性心疾患の治療の医療技術交流を行ってきた。2011年から3年間の第一期と2016年度から4年間の第二期の成果および展望を紹介し、今後の国際協力の方向性を考える。【成績】第一期ではハノイE病院をカウンターパートに当院医療チームがベトナムを訪問し実際に手術を実施する事および岡山大学病院での医療研修を実施しベトナムへの技術移転を行った。これによりプロジェクト開始時にはほとんど実施されていなかった新生児手術および単心室症に対するフォンタン手術が実施されるようになり、その手術成績も適切な成績を達成した。第二期ではJICAプロジェクトにおける医療行為の制限が厳しくなり、手術など医療行為ができなくなったため、目標を人材育成とベトナム人スタッフによる自立的継続的教育システムの確立において、ベトナム語による医療マニュアル作製と講義、見学実習をハノイ国立小児病院、ホーチミン医歯薬大学病院、ハノイE病院と実施している。ベトナムでは基幹病院と周辺都市のサテライト病院での医療格差が厳然と存在し、患者移送システムなどの確立がなされていない。このため新生児期に治療介入の必要な疾患が適正な治療を受ける機会が極めて限定されている。今回のプロジェクトでは心臓血管外科、小児循環器科、麻酔蘇生科、看護、臨床工学士の各領域での専門的医療行為、技術移転のみならず、発展途上国における制限のある医療資産の有効利用による裨益患者の増加を目指した病院連携体制の構築もすすめている。【結論】JICA草の根プロジェクトの枠組みによりベトナムへの先天性心疾患治療の技術支援を行い、良好な実績を上げてきた。今後はベトナム側の社会医療資産の限度を考慮して最大限の効果を上げる支援の取り組みを継続することが重要である。