[II-MOR08-05] 小児大動脈弁狭窄に対する初回治療方法の違いによる予後および遠隔成績
キーワード:大動脈弁狭窄, 大動脈弁形成術, 大動脈弁置換術
【目的】大動脈弁狭窄(AS)に対する、初回治療方法や治療時期の違いによる予後や自己弁温存の割合を比較すること。【対象・方法】1983-2017年の間に当院に入院歴があり、大動脈弁狭窄(弁下、弁上狭窄は除く)に対して治療を行った症例を後方視的に検討した。【結果】症例は43例(男29、女14)で、初回治療からの観察期間は8.1±6.7年。疾患は単純型AS 25例、 CoA合併2例、CoA+VSD合併7例、その他合併9例。初回治療は経皮的バルーン大動脈弁形成術(BAV:B群)は26例で治療時年齢の中央値1ヶ月(0日-16.4歳)、うち乳児期早期(6ヶ月未満)は18例(69.2%)。外科的大動脈弁形成術(SAV:S群)は10例で治療時年齢の中央値9.1歳(23日-12.8歳)、6ヶ月未満は1例(10.0%)。同様に初回大動脈弁置換術(AVR) 3例(7.7-17.7歳)、初回Ross手術4例(10ヶ月-10.8歳)。死亡は7例(17.5%)でB群6例(23.1%)は全て2ヶ月以内に初回治療を施行、S群の死亡は1例(10.0%)。死亡例を除くと、自己弁温存(AVRまたはRoss手術を回避)出来たのは、B群は観察期間平均11.6年(1.5-24.4年)で17/20例(85.0%)、S群は観察期間平均6.1年(0.6-17.2年)で5/9例(55.6%)。また、6ヶ月以降に初回治療を行ったB群8例とS群9例を比較すると、治療前圧較差はB群66.5±29.7mmHg、S群78.0±20.8mmHg。死亡はB群0例、S群1例(11.1%)。自己弁温存はB群6例(75.0%)、S群5例(55.6%)であった。いずれの比較においても有意差は無かった。【考察】初回BAVの方が初回SAVに比較し予後は不良であったが、初回BAV症例には、乳児期早期に治療を必要とした重症例が多く含まれていたことが原因と推測された。一方で、BAVでも死亡が回避できた症例や、6ヶ月以降に行った症例の死亡率はSAVよりも低く、自己弁温存率はSAV症例よりも高かった。【結語】乳児期早期に治療が必要な重症例を除けば、予後・自己弁温存の点から見て、BAVはSAVと同等かまたはより優れた治療法である。