[II-OR22-03] Gd-EOB-DTPAを用いたFontan術後患者における肝障害進展様式の検討
Keywords:FALD, Fontan, Fibrosis
【背景】Fontan術後の肝障害は重要な合併症の一つであるが、その臨床像、病態に関する知見は極めて少ない。肝障害の病態の把握はFontan術後患者の管理上、重要な課題である。【目的】肝細胞特異性MRI造影剤であるGd-EOB-DTPAを用いた造影MRIでFontan術後患者の肝障害の特徴と進展様式を明らかにすること。【方法】研究デザインは単施設後方視的観察研究。対象は2012年1月から2017年12月に造影MRI検査を行ったFontan術後患者。評価項目は、造影MRI検査所見、心臓カテーテル検査所見、血液検査とした。【結果】対象は75例。MRI撮影時のFontan術後経過年数2年未満(早期群;中央値1.1年)が37例、2年以上5年未満(中期群;中央値4.0年)が18例、5年以上(後期群;中央値10.0年)が20例だった。三群間でCVP値に差はなかった。特徴的な造影MRI所見は、中心静脈領域の造影不良、肝辺縁不整、胆汁うっ滞であり、中心静脈領域の造影不良所見を呈した症例は早期群31例(84%)、中期群15例(83%)、後期群19例(95%)、肝辺縁不整は早期群8例(22%)、中期群2例(11%)、後期群13例(65%)と後期群で頻度が高かった。胆汁うっ滞は早期群5例(14%)、後期群4例(20%)で中期群には認めなかった。血液検査ではAST、γGTPが早期群で高い傾向を示し、後期群でT-Bilが有意に高値、血小板数が有意に低値を示した(p<0.05)。【考察】造影不良所見は中心静脈圧上昇に伴う肝類洞の障害や肝線維化、肝辺縁不整は類洞障害の進展と肝萎縮を反映していると考えられ、慢性的な中心静脈圧上昇により肝全体へと進展していく病態が示唆される。胆汁うっ滞は早期群では肝腫大による胆汁排泄遅延が主体であり、その後一旦は改善するものの肝線維化が進行するにつれて肝萎縮から胆汁鬱滞をきたすという機序が推測される。