[II-OR22-02] 小児期発症肺動脈性肺高血圧症におけるX遺伝子変異の役割
Keywords:肺動脈性肺高血圧症, 遺伝子変異, p53シグナル伝達経路
【目的】肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension : PAH)において、これまでに複数のPAHの疾患原因遺伝子が同定されているが、PAHの半数以上では原因遺伝子がいまだ確認されていない。本研究ではエクソーム解析を用いてPAHの新規疾患遺伝子を同定し、その変異がPAHの発症にもたらす影響をあきらかにし、PAHの新たな治療法の創出への寄与を目指す。【方法】PAH患者が複数名存在する18家系において、遺伝学的検査を施行した。このうち、既知の原因遺伝子変異が同定されなかった、小児期発症PAH患者を2名含む1家系においてエクソーム解析を実施したところ、X遺伝子変異(p.R554L)を検出した。siRNAを利用してこのX遺伝子をノックダウンしたところ、ヒト肺動脈平滑筋細胞(human pulmonary arterial smooth muscle cells :hPASMCs)の増殖能が低下すること、hPASMCsの核内p53およびp21の発現量が増加し、p53リン酸化が亢進することがあきらかになった。次に、p.R554L-X変異遺伝子コンストラクトをhPASMCsに導入したところ、野生型X遺伝子と比較して増殖能を亢進させ、核内p53およびp21の発現量を減少させ、p53リン酸化を減弱させることがあきらかになり、機能獲得型変異であることが示された。さらに、p.R554L-X変異遺伝子はhPASMCsにおいて、アポトーシス細胞を有意に減少させることがあきらかになった。また、抗X抗体を用いて免疫沈降を行ったところ、Xタンパクは野生型、p.R554L変異型共にp53と結合しうることが示された。【考察】X遺伝子変異によってp53伝達経路の活性低下が惹起され、これによりhPASMCsが異常増殖し、その結果肺動脈肥厚が生じてPAHが発症する可能性が示された。