[II-OR23-02] 成人フォンタン術後患者の循環血液量と血行動態及び予後との関連
Keywords:フォンタン術後, 循環血液量, 血行動態
【背景】一般循環器疾患患者の心不全管理において体液量評価は重要でありその知見は散見されるが、その至適値は明確でない。一方、単心室血行動態を含む成人先天性心疾患患者における報告は少なく、その特異な病態との関連も明らかでない。【目的】成人フォンタン術後患者における体液量とその血行動態、予後との関係について検討する。【方法】成人フォンタン術後患者85名において、インドシアニングリーンを用いた色素希釈法から循環血液量(BV:ml/kg)を測定し、フォンタンの病態と比較した。また疾患コントロール群として二心室修復術後(BVR)患者27名との比較も行った。【結果】成人フォンタン術後患者のBVはBVR群より多く(86±27 vs. 76±15 ml/kg、p<0.01)、従来の報告よりも多い値であった。フォンタン術後患者の多いBVは、高い中心静脈圧(p<0.05)、高い心係数(p<0.01)、低い還流圧(p<0.01)、低い動脈血酸素飽和度(p<0.05)と関連し、低い還流圧(p<0.01)は多いBVと独立に関連した。一方、血中レニン活性は利尿剤、ACE阻害薬内服に加え多いBVと正相関を示した(r = 0.27, p = 0.014)。体心室の拡張末期容積や駆出率、ヘモグロビン濃度、脳性ナトリウムペプチド、最高酸素摂取量との関連は認めなかった。また、フォンタン術後患者のうちBVが多い10名では、その他の75例では年齢や術後経過時間には差を認めなかったが、予期しない入院の頻度が高かった(ログランク, p = 0.002)。一方、今回のBVR群では予期しない入院はなかった。【総括】成人フォンタン術後患者のBVは成人のBVR群より多い。その多いBVはいくつかの血行動態、特に低い還流圧、と関連し、フォンタン病態に関連した臨床事故の原因となることが示唆される。