[II-OR26-02] 高肺血流を伴う先天性心疾患を合併した早産児に対する低酸素療法の検討
Keywords:低酸素療法, 早産児, 先天性心疾患
【背景】左心低形成症候群(HLHS)や大動脈縮窄(CoA)/離断複合(IAA)などに対する初回手術までの肺血管抵抗/肺血流の調整を目的とした窒素吸入による低酸素療法(HGVT)は有用である.当院ではHLHSやCoA/IAAに限らず,肺血流増加を伴う先天性心疾患(CHD)を合併した新生児,特に,早産児に対し未熟性や低体重による早期手術のリスクを回避する目的で積極的にHGVTを行っているが,その安全性や有効性は明らかでない.【目的】早産児に対するHGVTの有効性と安全性の検討.【方法】2006-2017年に当院で初回手術までにHGVTを施行された肺血流増加型CHDを合併した早産児(P群)と正期産児(T群)の臨床背景,手術到達率,手術時日齢,術前合併症,挿管日数,HGVT日数,術後死亡率を後方視的に検討.染色体異常/多発奇形症候群は除外した.【結果】P群(n=24)/T群(n=79)の在胎週数,出生体重,Apgar score1分,5分値はそれぞれ,34.5(24.4-36.9)/39.4(37.0-41.7)週,1639±674/2911±435g,7.0(3-8)/ 8.5(5-10)点,8.0(4-9)/ 9.0(7-10)点で,全てに有意差を認めた.P群/T群の主疾患の内訳はCoA;4/27例,IAA;4/8例,HLHS;1/13例,TGA;6/9例,DORV;1/5例,VSD;3/7例,PDA;2/0例,TAPVC;1/5例,その他;2/5例で,姑息/根治術の内訳はP群;12/11例,T群; 45/34例であった.HGVT日数(P群:6(1-139)日/T群:4 (1-59)日; P=0.040)に有意差を認めたが,手術時日齢(P群:11(2-139)日/T群: 8 (2.0-82)日; P>0.05)は有意差を認めなかった.術前に壊死性腸炎をP群に3例(12.5%),T群に4例(5.2%)認めたが発症率に有意差は認めなかった.手術到達率はP群95.8%(23/24)でT群100%(79/79)と有意差は認めなかった.術後死亡率はP群が有意に高かった(P群:13.0%(3/23)/T群1.3%(1/79); P=0.012)が,HGVTとの因果関係は無いと考えられた.【まとめ】早産児においても低酸素療法を行うことで正期産児と同等に初回手術に到達できることが示唆されたが,壊死生腸炎の発症に注意が必要と考えられた.