[II-OR29-05] フォンタン循環における静脈うっ血と後負荷増強の関連
Keywords:フォンタン, 後負荷, 血管機能
背景:小児期フォンタン循環では肺循環が体循環に対して直列に配列することによる後負荷増強が心室血管カップリング増悪に関与し、合併する静脈うっ血が末梢臓器障害と相まって心不全の病態を形成する。フォンタン循環における心血管系特性は明らかにされてきたが、静脈うっ血に伴う動脈系の動的な反応については明らかでない。方法:フォンタン循環23例と非フォンタン循環87例において下大静脈を一過性に閉塞し、静脈うっ血を増強させた際に反応して起きる後負荷増強のメカニズムを血行動態指標、神経液性因子、静脈機能位指標を用いて解析した。結果:フォンタン循環は非フォンタン循環と比較して後負荷が高く心拍出量が少なかった。IVCOに伴う遠位側CVP上昇は非フォンタンに比べてフォンタン症例で有意に大きかったが、Ea上昇は両群で差が無く、フォンタン症例でEa上昇反応が鈍化していた。このことはIVCO時の遠位側CVP上昇とEa上昇反応に強い負の相関があることからも明らかであり、フォンタン循環では静脈系血管を締める作用が強く発動している一方、動脈系血管を収縮させる反応が飽和している可能性が示唆された。同様に静脈系の還流特性を示す平均循環充満圧とEa上昇も強い負の相関を示し、またSVRもEa上昇と弱いながらも負の相関を示すことから、静脈系から血液を動員する作用は動脈系をも巻き込んだ全身性の血管収縮反応である可能性が示唆された。IVCOに伴うEa上昇はRAAS系とは相関を認めなかった。結論:フォンタン循環では慢性静脈うっ血に伴って動脈系の血管収縮反応も最大化されている。この反応はRAAS系と独立していることから、フォンタン循環における後負荷解除はRAAS系による介入だけでは不十分と考えられる。