第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション3(II-PD03)
この症例をどうするか?:診断へのアプローチ

2018年7月6日(金) 15:00 〜 16:30 第1会場 (メインホール)

座長:瀧聞 浄宏(長野県立こども病院 循環器小児科)
座長:豊野 学朋(秋田大学大学院医学系研究科 医学専攻 機能展開医学系 小児科学講座)
コメンテーター:石川 友一(福岡市立こども病院 循環器センター循環器科)
コメンテーター:稲井 慶(東京女子医科大学心臓病センター 循環器小児科)
コメンテーター:森 善樹(北里大学メディカルセンター 小児科)

[II-PD03-05] aortocoronary atresiaを合併したPA with VSD,hypo RV,三尖弁構造異常の1例をどうするか?

吉井 公浩1, 佐藤 純1, 大森 大輔1, 加藤 温子1, 吉田 修一朗1, 武田 紹1, 西川 浩1, 大沢 拓哉2, 櫻井 寛久2, 櫻井 一2, 大橋 直樹1 (1.中京病院 中京こどもハートセンター 小児循環器科, 2.中京病院 中京こどもハートセンター 心臓血管外科)

キーワード:aortocoronary atresia, PA VSD, Ao-RV shunt

【背景】全冠動脈口閉鎖(aortocoronary atresia;CA)合併の純型肺動脈閉鎖症(PAIVS)は稀で死亡率100%と報告される。当施設では同疾患に対してAo-RV shunt作成により右室依存性冠循環(RVDCC)を経由した冠血流で生存しえた症例を最近経験した。これにはRVからの盗血が無い事が条件となる。今回、心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖(PA with VSD),hypo RV,三尖弁異常にCAを合併した症例を経験した。文献的に前例の無い本疾患群の診断および血行動態把握と治療介入時期の適正化につき検討する。【症例の診断】胎児診断例で、三尖弁の構造異常も指摘されていた。在胎38週4日、2148g正常分娩で出生。心エコーにて単心室循環を想定するPAVSD,hypoRV,PDAと診断した。経過中に心電図上ST変化の進行、エコー上coronaryの不明瞭やVSDを介する血流波形が奇異であり、日齢29に心臓カテーテル検査を施行した。造影でCA、RVDCCと判明した。LVGではVSDを介してRVは造影されず、RVGでもVSDを介してLVが造影されなかった。また両心室はほぼ等圧であった。エコー所見と併せると三尖弁口が2つあり、RAからRVと、RAからVSDを介してLVと異なる経路を持ち、VSDでの両心室間の交通は無く、RVからの盗血は無いと推測した。【治療アプローチ】Ao-RV shuntの適応について協議を繰り返すが、前例の無い三尖弁構造および心室間交通の解釈、等圧のRV圧でのCA発生の疑問や想定する手術死亡率から介入時期を遅らせた。その後、LV拡大に伴う低心機能や不整脈の出現により日齢59にBT shuntおよびAo-RV shuntを施行した。ECMOから離脱困難で16PODに多臓器不全で死亡した。病理解剖で2弁口化様の三尖弁が確認された。【考察】VSDの存在により、病態把握が混乱しAo-RV shunt適応外として手術介入時期を遅らせた。RVGでLVが造影されない事が、両心室間交通の存在を否定する本病態の適正な判断であったと思われる。【結語】本報告により本疾患群の存在を共有したい。