[II-S08-01] 心疾患合併妊娠と妊娠前カウンセリング 現状と重要性
Keywords:成人先天性心疾患, 妊娠, カウンセリング
先天性心疾患患者の妊娠と出産にはガイドラインや書籍が出されており実際の臨床現場で役立っている。しかし、中等症以上の場合、安全性とリスクに関するデータやエビデンスは、患者にも医療者にも必ずしも十分とはいえない。複雑心奇形の修復術後などでは同一疾患であっても手術術式、遺残病変、不整脈の有無など、個別に違いを見せるため、それぞれに合わせたテーラーメイドな管理が求められる。管理上最も大切なのは、まず、妊娠・分娩・産褥期の循環に関わる時系列に沿って変化する生理的変化を知ることである。そして、その知識を持つ経験ある専門家集団による集学的管理が求められる。循環に最も大きな影響を与えるのは循環血液量の増加である。前負荷の増大という意味で心臓には不利益な変化であるが、産科的な見方をすると胎児への安定した酸素供給という点で有利な変化である。正常心機能の場合、この変化に耐えうるのだが心臓が対応しきれない場合には心血管系のイベントの発生に繋がる。母体安全のために妊娠前のリスク評価は重要である。母児のリスクを予測するスコアリングが報告されている。modified WHOリスク分類、CARPREGリスクスコア、ZAHARAリスクスコアが代表的なものである。最も予後に反映するのはmodified WHOリスク分類である。とはいえ、その有用性には限界があり妊娠前にリスク評価を行ったとしても、妊娠予後を正確には予測することは出来ないと考えられている。日本における先天性心疾患女性の妊娠前カウンセリング状況は、他国と比べて情報提供が少ない傾向にあったことが奉告されている。自身の疾患・病状について十分理解しているか把握し、理解が不十分な場合は、疾患についての説明から開始することが好ましい。その意味でも妊娠前カウンセリングの時点から、チームでの関与が重要である。