[II-S08-02] 先天性心疾患を持つ肺高血圧症と妊娠出産
Keywords:肺高血圧症, 先天性心疾患, 妊娠
肺高血圧症は原則妊娠禁忌疾患の一つであり、IPAHは若い女性にも多い。近日先天性心疾患に合併したIPAHの要素の高い症例を経験した。 症例)患者は32歳女性。ASDにて近医循環器小児科でフォローされていた。12歳でカテーテル検査を受けASD2次孔12mmの欠損でQp/Qs1.36でmean PA(24)あったが、経過観察とされた。妊娠21週でPHの為紹介時には心エコーでTRPG61mmHg, カテーテル検査でmean PA 50mmHgであり、タダラフィル内服、エポプロステノール静注を開始した。妊娠後期に再度カテーテル検査を施行しmean PA31mmHgまで改善を認めた。妊娠37週に全身麻酔下に帝王切開を施行し2800gの元気な女児を出産した。現在産後8か月でフローラン、アンブリセンタン投与下に心機能は安定しNYHA1度、育児も母親の助けをかり十分に行えている。 肺高血圧症は、IPAHでも先天性心疾患に合併するものでも、妊娠中の心不全、血栓症のリスクが高く、子宮内胎児発育遅延も伴いやすい。我々は単施設で、肺高血症合併妊娠の母体、胎児予後の検討を行った。妊娠前の肺動脈平均圧が40mmHgを超える重症群でそれ以下の軽症群と比較して妊娠後半期に肺動脈平均圧の有意な上昇がみられ(72.8 vs 53.5 mmHg, p<0.05)、母体予後不良例(NYHA Ⅲ, Ⅳ, 母体死亡)が多く見られ(13/14 92% vs 1/10 10%, p<0.05)、分娩週数が早く(31.4 vs 36.4週, p<0.05)、子宮内胎児発育遅延の症例が有意に多かった。妊娠前の肺動脈圧は母体、胎児予後と関連する事が示唆された。 提示症例は20年前のカテーテル検査では手術適応なしと判定されたが、mean PA 24mmHgとPHに近い状況でtreat and repairの概念から、現在ではASD閉鎖術の後に肺高血圧のフォローが行われたであろう。先天性心疾患を持つ女性の妊娠は増加傾向にあるが、治療適応のないASD, VSD例もIPAHの要素が高い肺高血圧症を妊娠前後に発症する症例があり、妊娠前の治療戦略、妊娠中の定期的フォローアップは重要である。