The 54th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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シンポジウム

シンポジウム8(II-S08)
妊娠ハイリスク疾患における可能性と限界、妊娠前カウンセリングの有用性

Fri. Jul 6, 2018 4:40 PM - 6:10 PM 第3会場 (302)

座長:神谷 千津子(国立循環器病研究センター 周産期・婦人科)
座長:川副 泰隆(千葉県循環器病センター 小児科・成人先天性心疾患診療部)

[II-S08-03] ファロー四徴修復術後と妊娠・出産

堀内 縁1, 神谷 千津子1, 大内 秀雄2, 中西 篤史1, 釣谷 充弘1, 岩永 直子1, 白石 公2, 黒嵜 健一2, 吉松 淳1 (1.国立循環器病研究センター 周産期・婦人科, 2.国立循環器病研究センター 小児循環器科)

Keywords:ファロー四徴, 妊娠, 妊娠前カウンセリング

ファロー四徴(TOF)修復術後女性の多くは妊娠・出産は可能であり耐容しうるが、妊娠・出産のリスクは妊娠前の遺残病変や続発症の重症度に依存する。軽度から中等度の肺動脈弁逆流に伴う右室容量負荷を認め循環動態に異常を来していない場合には、妊娠・出産はローリスクである。しかし、高度肺動脈弁逆流、右室拡大や機能低下、上室頻拍や心室頻拍を合併する場合には、周産期における母体のリスクは高くなる。
当施設の経験では、周産期における母体心血管合併症の予測因子として、上室性頻拍の既往、妊娠前もしくは妊娠初期の胸部X線の心胸郭比拡大があげられた。またclass II以上のNYHA、再手術の既往、妊娠前からの循環器薬内服、心電図上QRS幅拡大は有意な傾向を認めた。また心臓MRI検査を用いた検討では、妊娠前の右室拡張末期容積(index)が大きい(RVEDVI≧180ml/m2)ことが予測因子である。
また、TOFは大動脈壁中膜の組織異常を認め、血管の弾性低下や大動脈拡大を生じ、将来的に大動脈瘤や破裂、解離だけでなく、弁逆流の悪化や冠動脈血流低下や左室収縮能低下を引き起こす可能性のある‘Aortopathy’としても重要である。
当院で管理したTOFを含む円錐動脈幹異常修復術後合併42人49分娩において、13分娩(26.5%)で周産期に有意に大動脈径拡大をしており、さらに分娩半年から3年後には、妊娠前の大動脈径へ回復していないことが判明した。大動脈径拡大の危険因子として、肺動脈閉鎖症例、短絡術既往、修復術の年齢、さらに妊娠前もしくは初期の左室拡張末期径が挙げられた。
また当院で調査した児の先天性心疾患の繰り返し頻度は6.2%であり、さらに2.5%がTOFであった。
TOF修復術後女性においては、各個人において妊娠前の適切な時期に妊娠・出産に伴う母児のリスクについて情報提供を行い、カウンセリングを行うことが母体の安全な妊娠出産のために重要である。