[P02-02] 右下肺静脈が左心房と下大静脈の両方に交通するScimitar variantの一例
キーワード:Scimitar, IVC, LA
【緒言】Scimitar症候群は右肺静脈の下大静脈(IVC)への還流異常を認める。今回、我々は心内奇形や肺分画症を伴わず、右下肺静脈(RLPV)が左心房(LA)とIVCの両方に交通する部分肺静脈還流異常症(PAPVR)のみを認めた極めて稀なScimitar variantの1例を経験したので報告する。【症例】16歳女児。学校健診の胸部レントゲンで右横隔膜挙上を指摘され、当院へ紹介受診となった。胸部造影CTで、右横隔膜ヘルニアと右下肺静脈が下大静脈に流入するPAPVRの診断となった。心臓カテーテル造影検査を施行し、RLPVがLAとIVCの両方に流入している異常所見を認め、さらに蛇行したIVCを認めた。心房中隔欠損症や下行大動脈から起始する異常血管は認めず、Qp/Qs:1.10、主肺動脈平均圧:16mmHgであった。現時点では治療適応はないと判断し、外来経過観察の方針とした。【考察】本症例は、右横隔膜ヘルニアに伴う右肺低形成を伴っており、Scimitar症候群の亜型と考えられた。過去の文献レビューによると、Scimitar症候群の1割に低形成肺から出たPVがLAとIVCの両方に交通しているとの報告があったが、他の心疾患を合併しない無症候性例の症例報告は散見されるのみであった。また、Scimitar症候群の治療に関する過去論文では、他の心疾患や肺高血圧のない症例では手術介入の必要はないと結論付けている。本症例では、今後、左右短絡が増加してきた際にPV-IVC交通に対する経カテーテル的閉鎖術を行う方針としている。【結語】Scimitar症候群の稀な1例を経験した。本症例のように、他の心疾患がなく肺高血圧を伴わない症例においては、治療介入を行わずに経過観察できると考えられる。