[P05-04] 治療抵抗性の重症肺動脈性肺高血圧症の乳児例
Keywords:肺動脈性肺高血圧, プロスタグランジンI2, 肺移植
肺動脈性肺高血圧症(以下PAH)は予後不良な疾患とされていたが、近年では特異的治療薬の進歩により、予後の改善が報告されるようになっている。しかし一方で治療抵抗性の症例も依然存在する。今回、治療に対しきわめて抵抗性の重症乳児例を経験したので報告する。 症例は7か月女児。やや体重増加不良があり、近医でフォローされていた。自宅で離乳食摂食中に突然顔色不良を呈し、前医に救急搬送された。胸部X線で著明な心拡大を認めた。心臓超音波検査で著明な右室の拡大と左室の圧排、肺高血圧所見を認めたため、管理目的で当科に転院搬送となった。当科初診時、胸部X線で心拡大(心胸郭比63%)、血液検査ではBNP 5909.1pg/mlと著明な上昇を認めた。また、心臓超音波検査において収縮期血圧88mmHgに対し、三尖弁逆流から推測する肺動脈圧は91mmHgに達した。プロスタグランジンI2(PGI2)、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬による内服治療を開始し、それぞれを添付文書上の最大用量まで増量したが、肺高血圧所見は改善しなかった。入院管理78日目に嘔吐、顔色不良、酸素飽和度の低下を認め、心臓超音波検査でも肺高血圧所見の増悪を認めたためICUに入室し、一酸化窒素吸入療法を施行した。 その後PGI2持続静注療法を導入した上で、小児病棟に転棟した。しかしその後も肺高血圧の改善はみられず、PGI2も70ng/kg/min以上まで増量したが、十分な効果は得られていない。現在も入院加療を継続しており、肺移植も視野に入れて今後の治療方針を検討中である。