[P06-01] 胎児期の急速な心拡大、心機能低下と病理所見でびまん性の心筋石灰化を認めた胎児心筋炎疑いの1例
Keywords:胎児診断, 心筋炎, 石灰化
【症例】母29歳初産婦、家族歴なし。妊娠18週で右室自由壁に6mmの高エコー結節を認め当院紹介。この時点ではCTAR26%, 心機能も保たれていた。しかし、妊娠23週の検査時に両心室の全周性の輝度上昇、心収縮力低下、CTAR34%と心拡大も進行認めた。TORCH、パルボウイルス、抗SS-A/B抗体は陰性、羊水染色体検査は正常核型であった。妊娠24週より胎児水腫となり、その後CTAR50%まで心拡大は進行、僧帽弁閉鎖不全の増悪も認めたため、34週1日帝王切開で出生。出生体重2568g、Apgar score 5-8。出生後のエコーでは左心系の著明な拡大、収縮力低下、重度僧帽弁閉鎖不全、右室は低形成で流出路の狭窄、狭窄部心筋の輝度亢進を認めた。大動脈弁、大動脈弓の狭窄は認めなかった。頭部の著明な皮下浮腫、腹水を認めたが胸水は経度であった。出生後よりNICUで全身管理を行ったが高度のうっ血性心不全のため日齢57に死亡した。代謝異常は認めず、遺伝子検査でも異常は認めなかった。各種ウイルス検査を提出したが明らかな感染は特定できなかった。病理診断では両心室の乳頭筋から外膜まで新旧混じったびまん性の石灰化を認めた。冠動脈に明らかな異常は認めなかった。【考察】胎児期の心拡大、心機能低下の進行を確認できた貴重な症例であるが、左心系の拡大と右心系の狭窄という異なった所見を認めており診断に難渋した。はっきりとした原因の特定には至らなかったが、病理学的に両心室に及ぶびまん性の石灰化を認めており、胎内感染による心筋炎の可能性が考えられた。