[P06-02] 総肺静脈還流異常に合併する重度肺静脈狭窄の簡便な胎児診断法―胎児肺静脈血流波形と流速測定の有用性―
Keywords:胎児診断, 肺静脈狭窄, 肺静脈波形
【背景】総肺静脈還流異常(TAPVD)に合併した重度の肺静脈狭窄(PVS)症例は出生直後に外科的介入が必要となるため胎児期にPVSの部位・程度を正確に評価する必要がある。しかし右側相同心(RAI)では肺静脈還流形態は複雑であり、それらを正確に評価することは困難なことがある。【目的】TAPVDに伴うPVSでは、胎児肺静脈(PV)波形が変化し流速が低下する。それらの所見がRAI症例の重度PVSの有無を予測可能なことを証明すること。【方法】2015年から2017年に当院で胎児心エコーを施行したRAI胎児18例を対象とした。PV波形は心房背面の共通肺静脈で測定し、在胎30週未満(13例)と在胎30週以降(18例)の流速と波形を評価した。波形は平坦型,1峰型,2峰型へ分類した。流速低下は在胎週数毎の正常値の90%信頼区間以下(Bahlmann et al. Prenatal Diagnosis2016)、重度PVSは日齢5以内にTAPVD根治術を要した症例と定義した。【結果】18例中5例(上心臓型3例、下心臓型2例)は重度PVSであった。波形に関して5例中3例は平坦型、2例は1峰型であり、30週未満と30週以降で波形の変化はなかった。平坦型・1峰性であれば在胎週数に関係なく感度100%、得意度100%で重度のPVSを合併し、2峰性(上心臓型2例、下心臓型11例)では感度100%、得意度100%で重度PVS合併は否定できた。2峰性13例中の2例(上心臓型1例、心臓型1例)は出生後に軽度PVSを認めた。流速低下は在胎30週未満では重度PVSの2例中1例のみ認め、感度50%、特異度100%であった。妊娠30週以降では5例中4例に流速低下し、感度80%、特異度92%であった。下心臓型のPV波形が平坦型で流速低下が無い1例は出生後に静脈管閉鎖後に重度PVSとなった症例であった。【結語】胎児肺静脈PD波形と在胎30週以降の流速を測定することで、肺静脈の狭窄部位を同定することなく、RAI症例の重度PVSを予測することが可能であった。手技的にも簡便であり、臨床上有用な評価法である。