[P06-05] 間質性肺炎を合併した重度共通房室弁逆流症例に対する人工弁置換術
Keywords:弁置換術, 間質性肺炎, 共通房室弁
【はじめに】間質性肺炎(IP)合併例における開心術はIPを増悪させるリスクもあり、手術適応に際しては十分な検討が必要である。共通房室弁逆流による心不全の加療中にIPを合併した症例に対し、ステロイドパルス療法後に人工弁置換術を施行された1症例を報告する。【症例】2歳8か月女児。診断は、多脾症候群、単心房、単心室、共通房室弁口(重度弁逆流あり)、下大静脈欠損、奇静脈結合。肺動脈絞扼術(2か月)、Kawashima手術+共通房室弁形成術(1歳1か月)、ペースメーカー植え込み術(1歳2か月)が行われ、1歳6か月時には、上大静脈と肺動脈吻合部の瘤状拡大を認め、肺動脈形成術+再共通房室弁形成術が施行された。その後は内科的抗心不全療法を継続していたが、2歳4か月時に気道感染を契機に共通房室弁逆流による心不全が増悪し緊急入院した。心不全は治療抵抗性で、循環作動薬及び人工呼吸器からの離脱が困難となった。経過中、KL-6の著明高値(最大6048 U/ml、基準値:<500 U/ml)、肺CT検査で間質のスリガラス影が確認され、IPと診断された。ステロイドパルス療法を行い、画像所見はやや改善し、KL-6値も低下したが、2018 U/mlと下がりきらなかった。心不全改善のために人工弁置換術が必要な状況が続いていたが、IP合併下では非常にリスクが高いと判断された。家族の手術希望を確認し、さらに院内倫理委員会の承認を得た上で、人工弁置換術が施行された。術中合併症はなく、IPの増悪も認められなかった。術後、人工呼吸器からの離脱ができ、現在循環作動薬の漸減中である。【考察とまとめ】IPの原因は、高濃度酸素の長期投与、共通房室弁逆流による肺うっ血などが考えられた。IPの治療を先行することで、リスクの高い人工弁置換術を成功させることができた。