第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

心不全・心移植

ポスターセッション14(P14)
心不全・心移植 1

2018年7月5日(木) 18:00 〜 19:00 ポスター会場 (311+312+313+315)

座長:小野 博(国立成育医療研究センター 循環器科)

[P14-03] 小児脳死下臓器提供者の管理における課題

秋田 千里1,2, 森河 万莉1, 川崎 達也2, 犀川 太1 (1.金沢医科大学 小児科, 2.静岡県立こども病院 小児集中治療科)

キーワード:小児脳死下臓器提供, 心臓移植, 心筋石灰化

背景:小児レシピエントは体格的理由から小児ドナーを待ち続けており、待機中に命を落とす児も多い.家族の想いである臓器を最良の状態でレシピエントに届けることがドナー側の医療者の使命である.特にドナー家族にとって心臓は「生の象徴」として他臓器よりも臓器提供の希望(以下、提供希望)が強いことがある.今回、我々は医学的理由で心臓提供に至らなかった小児脳死下臓器提供症例を経験した.小児臓器提供過程でのドナー管理の課題を報告する.症例:6歳以上、10歳未満の小児.蘇生後低酸素性脳症で入院5日目に脳死とされうる状態と診断し、ただちに臓器提供の機会提示を行った.入院26日目(機会提示から21日目)に提供希望されたが、その間の治療方針は家族の逡巡とともに看取り医療と臓器保護で揺れ動いた.入院37日目に臓器摘出に至ったが、広範囲の心筋石灰化のため心臓提供はできず、他4臓器が4名に提供された.考察:家族の提供希望を受けて積極的な臓器保護にシフトするため、すでに不可逆的な臓器損傷をきたしている場合がある.本例は経過中に循環作動薬から離脱しており、心筋石灰化以外は移植可能な状態であった.心筋石灰化の要因として異栄養性石灰化が挙げられるが、経過中の血清CaとPはともに高値で推移しこれらの関与も考えられる.厳格な電解質管理と早期の臓器提供で心筋石灰化を最小限に抑えることができた可能性がある.しかし、早期の臓器提供を家族に要求することは倫理的に不可能であり、またJOTとmedical consultantからの臓器保護を中心とした患者管理は提供希望以降でしか得られない.小児ドナー管理の経験のない自施設のみで、提供希望までの期間に看取り医療と臓器保護を両立することは困難であった.結語:本例のように提供希望までに時間を要する家族が発生した際に、臓器保護を含めた患者管理が相談できるような体制整備を望む.