[P51-03] 造血幹細胞移植患者の心拍変動解析による自律神経機能評価
Keywords:心拍変動解析, 自律神経, 造血幹細胞移植
【背景】予後不良の小児血液疾患患者において、大量化学療法や造血幹細胞移植(HSCT)が必須であるが、心毒性が心配される。心拍変動(HRV)解析により、心機能と相互に影響のある自律神経機能について評価することができる。【目的】血液疾患患者に対する造血幹細胞移植が自律神経機能に与える影響について評価する。【方法】対象は2006~2016年に造血幹細胞移植を受けた26名(1.2~22.6歳、中央値 8.6歳)。男女比=17:9。急性リンパ球性白血病18例、急性骨髄性白血病5例、悪性リンパ腫3例。全例移植前に化学療法を受け、前処置としてシクロホスファミド投与と全身放射線照射が施行された。前処置前(移植前)、移植後2か月以降の退院時(移植後)に24時間ホルター心電図を記録し、HRVについて移植前後で比較した。【結果】覚醒時のCVRR(移植前 18.4ms vs. 後 15.3ms、P=0.016)、SDNN(78.1ms vs. 64.9ms、P=0.01)、rMSSD(21.7ms vs. 16.4ms、P=0.043)が移植後で有意に低値であった。スペクトル解析では、24時間、覚醒時は高周波成分(HF)、低周波成分(LF)(24時間:HF 207.7ms2 vs. 99.3ms2、LF 701.1ms2 vs. 404.0ms2、覚醒時:HF 128.5 vs. 66.0、LF 549.6 vs. 263.2、各P<0.05)が、睡眠時にはLFが移植後に有意に低下した(787.7 vs. 488.8、P=0.012)。LF/HFは有意差を認めなかった。【考察】HRV解析により、HSCTに伴う自律神経調節能の低下、特に副交感神経活動低下の可能性が示唆された。無症候性の自律神経機能異常、それに伴う心血管合併症の早期発見に有用である可能性がある。【結論】血液疾患に対する大量化学療法を伴うHSCTは、自律神経機能異常のリスクがある。