[I-OR01-01] 絶飲食中の左心低形成症候群のHybrid stage1術後難治性乳び胸水をインドシアニングリーン近赤外線蛍光リンパ管造影で診断しえた1例
Keywords:乳び胸水, 術後合併症, リンパ管造影
【背景】乳び胸水(Ct)は先天性心疾患術後の2~5%に合併し、予後不良因子である。胸水の性状、細胞数、トリグリセライド(TG)値、脂肪滴の定性、リピオドールリンパ管造影で診断され、インドシアニングリーン(ICG)近赤外線蛍光リンパ管造影(NIRFLI)やMRIによる画像診断も報告されている。【症例】在胎37週2日、体重2652gの男児。左心低形成症候群類縁疾患(大動脈弁狭窄、僧帽弁閉鎖不全、大動脈低形成)、心房中隔欠損、動脈管開存と診断し、日齢6心房中隔裂開術、日齢7両側肺動脈絞扼術、動脈管ステント留置術(Hybrid stage1)を施行した。母乳による経腸栄養開始後、日齢10に両側胸水が出現、増加したが休日中のため胸水細胞数が測定できず、TGも 右13 mg/dl、左17mg/dlであった。Ctを否定できず、母乳をMCTミルクに変え、ステロイド、オクトレオチド、13因子投与も改善しなかった。絶飲食後も、黄色透明の胸水が左右合わせて200ml/日以上漏出した。胸水の再検査(左/右)では、TG 25/34mg/dl(血中TG92)、細胞数19(リンパ球19)/ 3150(リンパ球3150)で、完全には診断基準を満たさなかった。Ctの確定診断のため、ベッドサイドでNIRFLIを行なった。右下腿から順に左大腿、左前腕にそれぞれICGを25μgずつ皮下注射し、近赤外カメラで継時的に観察した。両下肢は鼠径部で停滞し腹腔に漏出したが、左前腕に投与したICGは30分以内に左肩から左側胸部に到達し、数分で左胸腔ドレーン内に流出した。その後10分程度で右胸腔ドレーンに流出したことが確認され、両側Ctと診断した。【考察】NIRFLIはICGがリンパ管内に取り込まれる特性を利用したもので、皮下にICG溶解液を注射し、近赤外線の励起光を観察することで、胸腹水中の乳び漏出を直接証明できる。煩雑さや副作用を伴わずにベッドサイドで簡便に行える。本症例では、さらに絶飲食中でもリンパ液の動態をリアルタイムに観察でき、Ctの診断及びその漏出機序の推定に有用であった。