[I-OR01-02] 乳児早期の両方向性グレン手術がフォンタン術後に与える影響についての検討
Keywords:グレン手術, フォンタン術後, 乳児早期
【背景】機能的単心室患者の両方向性グレン(BDG)手術を行う時期は明確ではない。BDG手術は酸素飽和度低下など患者要因による早期施行例もあり、その長期的な影響は不明である。特にフォンタン(以下、Fontan)手術後の血行動態は遠隔期合併症と関連し、早期BDG手術の影響について検討を要する。【目的】乳児早期のBDG手術がFontan術後の血行動態に与える影響を明らかにすること。【方法】2008-2016年にBDG手術が施行された患者のうち、Fontan手術および術後の心臓カテーテル検査が施行された患者を対象とした。BDG手術を月齢3以内に施行した早期(E)群とそれ以降の後期(L)群に分類し後方視的に検討した。【結果】期間中BDG手術は70例(E群7、L群63)に施行された。このうちFontan到達はE群6例、L群47例でこれらを解析対象とした。Fontan未到達の死亡は4例あり、いずれもL群であった。E群はFontan到達月齢26.5(19.3-42.3)か月、BDG術前の肺血管抵抗値2.2(1.9-2.5)U・m2、平均肺動脈圧13.5(11.3-14.3)mmHg、PA index 178(166-190)mm/m2はいずれもL群との差はなかった。Fontan術後の心臓カテーテル検査(中央値366日)では、心室拡張末期圧、心係数、心収縮率、平均肺動脈圧、PA index、体血管抵抗値、中心静脈圧、transpulmonary pressureのいずれも両群間で差を認めなかった。肺血管抵抗値のみE群1.3(1.2-1.4) U・m2はL群2.0(1.5-2.5)U・m2と比較し低値であった(p<0.01)。Fontan術前及び術後での肺血管拡張薬の投与、Fontan手術時のfenestrationの作成、経過中の肺動脈形成術(手術及びカテーテル治療)は両群間で差を認めなかった。【考察】Fontan術後合併症には中心静脈圧や肺動脈圧上昇の関与が報告されているが、乳児早期のBDG手術によるFontan術後の血行動態への非劣性は認めなかった。肺血管床の条件を満たせば、乳児早期のBDG手術はFontan術後の血行動態への影響は少ないと考えられた。