[I-OR06-05] 負荷非依存の新しい収縮性の指標~心室圧最小変化率‐収縮末期容積関係~
キーワード:dp/dt min, ESV, hemodynamics
【背景】一過性前負荷変化時の心室圧最大変化率‐拡張末期容積関係の傾きは、時変エラスタンスモデルに基づいて算出される負荷に非依存の心収縮性を表す指標の一つである。同様に時変エラスタンスモデルを数理変形すると心室圧最小変化率 (dp/dt min)‐収縮末期容積関係 (ESV)関係も負荷非依存の収縮性指標となることが想定される。この仮説を検証した。【方法と結果】心室エラスタンスの収縮に伴う時間変化をE(t)とすると時変エラスタンスモデルにおいて心室圧P(t)と心室容積V(t)の関係はP(t)=E(t)×(V(t)-Vo) 式1と表すことができる。P(t)の変化率は式1を微分してdp/dt=dt[E(t)×(V(t)-Vo)]dtとなる(式2)。 E(t) をその最大値EmaxとEmaxに至る時間Tmaxで正規化した関数をEN(tN)とするとE(t)= (Emax/tmax)×EN(tN)と表され、dp/dt minが通常V(t)がESV近辺で起こることから式2はdp/dt min=Emax/tmax×(d EN(tN)/dt min) ×(ESV-Vo)と書くことができる。EN(tN)の形状は個体間でほぼ一定とされるので、dp/dt min - ESV関係の傾きはEmaxに比例し、負荷非依存の収縮性の指標となりうる。上記を犬18例で検証した。dp/dt min - ESV関係はほぼ直線となり、ドブタミンで有意に傾きを増し(p<0.001)、同時に測定したEmaxと良い相関を示した(y = 0.02x + 5.7506 R2= 0.6076)。【考察】dp/dt min-ESV関係は等容性弛緩期を利用した負荷非依存の心室収縮性の新しい指標といえる。等容性収縮期、収縮末期、心室仕事を利用した他の収縮性の指標とともに、心臓メカニクス、循環動態理解のために相補的に有用な情報を提供してくれる可能性がある。