[I-OR09-01] 小児重症心不全患者に対する植え込み型補助人工心臓の長期補助成績
Keywords:HVAD, Jarvik2000, 植え込み型補助人工心臓
[背景・目的]現在使用可能な植え込み型補助人工心臓(VAD)は成人を対象としたものであるが,当院では待機中のQOL向上に向け,積極的に使用している.そこで,当院でのHVAD(H)とJarvik2000(J)の使用経験を報告する.[対象・方法]対象は2012年から2019年1月までに当院で植え込み型VADを装着した18歳以下の12例(男4例).診断は拡張型心筋症6,拘束型心筋症2,拡張相肥大型心筋症・心筋炎後心筋症・虚血性心筋症・心肺蘇生後が各1例.4例で植え込み前にPCPS/temporary VADを要し,INTERMACS profileは1:6,2:4,3:2例.術後PT-INRは2.5-3.0を目標とし,抗血小板薬2剤を併用した.植え込み後の経過,循環動態,合併症を後方視的に検討した.[結果]H:5例,J:7例.うち1例はHでの両心補助であった.植え込み時の年齢は中央値H:12[range:11-13],J:13[12-15]歳,BSAはH:0.85[0.76-1.2],J:1.22[1.11-1.53]m2,LVDdは54[46-74]mm.BSAが小さい2例では胸壁への吊り上げなどの植え込み時の工夫を行なった.VAD補助期間はH:646[207-1070],J:709[194-1151]日.全例生存退院し,学校生活に復帰した.7例が心臓移植到達,4例が待機中,1例は術後194日目に脳出血で失った.LVAD設定はH:2500[2300-2600]rpm,J:dial 2[1-4]で管理開始した.脳合併症は6例(脳出血5、脳梗塞2).脳出血3例は血腫除去術を,脳梗塞2例は血栓吸引を施行した.外科的介入を要したdrive-line感染は5例.3例で有症状の産婦人科系出血を認めた.moderate以上へのAR増悪はH症例の4例において358[157-621]日で認め,1例でA弁閉鎖を要した.また同症例はBVADで,severe PRも認めP弁閉鎖も要した.[まとめ]HVAD,Jarvik2000ともに,脳血管障害を含む合併症への十分な注意が必要であるが,安全に移植待機可能なdeviceと言える成績であった.長期補助ではARの増悪を認める症例もあり,慎重な手術計画・経過観察が必要である.