[I-OR11-03] Fontan術後患者における肝合併症についての検討
Keywords:Fontan術後, 肝合併症, 画像評価
【緒言】Fontan術後遠隔期において肝線維症、肝硬変、肝細胞癌などの肝障害は重要な合併症の一つで長期予後に影響する。一方で、これら肝合併症についての発症時期、危険因子、評価方法などは確立していない。【目的】当科で経過観察中のFontan術後患者における肝合併症について検討する。【対象・方法】対象は、Fontan術後5年以上経過した患者(F群):19例(男6例、女13例)、年齢中央値:12.3歳(8~31歳)、術後経過年数中央値:9.8年(5~15年)で、これら患者における血液検査(肝胆道系逸脱酵素、線維化マーカー)と超音波検査やMRIを用いた画像所見について検討した。血液検査においては、他の先天性心疾患術後患者(N群):43例(心室中隔欠損症:20例、心房中隔欠損症:10例、ファロー四徴症:13例)とも比較検討した。【結果】血液検査では、F群のT-Bil(平均値:1.1±0.7 mg/dl)、γGTP(平均値:77±74 U/l)、LAP(平均値:82±26 U/l)はN群と比較し有意に高値であった(p<0.05)。また、線維化マーカーであるヒアルロン酸(平均値:48±36 ng/ml)と4型コラーゲン(平均値:9.1±2.8 ng/ml)もF群がN群と比較し有意に高値であった(p<0.01)。超音波検査あるいはMRIで線維化9例、結節病変7例に認め、超音波エラストグラフィによる肝弾性率は平均値:21.3±8.8 kPaと高値であった。線維化や結節病変の有無において、血液検査所見や肝弾性率に有意差はなかったが、年齢は線維化や結節病変を認めた症例で有意に高かった(線維化:16.6歳 vs 10.0歳、結節病変: 17.0歳 vs 10.8歳、p<0.05)。術後年数においても線維化や結節病変を認めた症例で長い傾向にあった(線維化:11.5年 vs 8.3年、結節病変: 11.5年 vs 8.4年)。【結語】Fontan術後の肝合併症は経年的に増加を認め、その把握には血液検査のみでは困難で超音波検査やMRIを用いた定期的な画像評価が重要である。