[I-OR18-03] 乳児期胸骨正中切開後の竜骨型鳩胸に対する矯正装具の開発(第2報)
Keywords:鳩胸, 胸骨正中切開後, 矯正器具
【背景】乳児期の胸骨正中切開では、骨化が十分でない胸骨への手術侵襲が加わることにより、術後に横隔膜前方部の発育不良、肋骨及び肋軟骨の過剰発育、および胸骨分節の癒合異常を原因とした竜骨型鳩胸がしばしば発生する。胸郭変形に対する有効な予防法はなく、変形発生時の装具着用による矯正が行われている。現在市販される矯正装具は、胸郭全体を圧迫する構造であり、胸郭の成長と肺機能の発達に重要な時期の患児への装着は様々な懸念が存在する。【目的】胸郭全体ではなく、胸骨突出部のみに適度な圧迫力をかけることで変形の予防や増悪を防止する竜骨型鳩胸矯正装具を開発し中期成績を検討する。【方法】本装具は、変形し突出した部分を除いた胸郭の形状にフィットした外郭と突出部のみに圧力発生をするパッドを有する構造体であり、伸縮性ベルクロ素材で圧力を調整する。圧センサーによる圧力測定で過剰圧による褥瘡等の予防を行う。開発・実用化にあたり、軽量骨格、圧迫部の低反発素材、そして快適性を考慮し、吸温性素材など構成パーツの選定と製品デザインを産学連携事業により複数の企業の協力を得た。本装具装着による効果と安全性について調査した。【対象】装着の希望のあった51例(うちダウン症11例、複数回の胸骨切開23例)。男児:女児=25:26。【結果】装着開始年齢は4ヶ月~5歳5ヶ月(中央値:1歳2ヶ月)、装着期間は1ヶ月~5年4ヶ月(中央値:1年11ヶ月)。3Dスキャナーによる突出度の測定(Sagittal,Axial)では、装着前146±10.6°,145±10.4°から装着後150±11.6°,150±12.9°と改善した。変形段階表を用いた主観的改善度では、胸骨変形の改善が24例、進展防止が15例、進展が4例であった。皮膚褥瘡の合併症はなかった。【結語】術後装着開始の至摘時期および患部圧迫に適正な圧力設定を症例蓄積から抽出することに加え、長期フォローによる効果判定を通じ必要な改良を更に行いたい。