[I-P02-03] 当院における新生児周術期の頸静脈血栓症とその合併症の検討
Keywords:頸静脈血栓, 乳糜胸, 周術期合併症
【背景】心臓手術において中心静脈カテーテル(CV)挿入は必須であるが、新生児では血管径も小さく、長期留置による血栓のリスクを伴っている。頸静脈血栓閉塞合併による術後経過への影響を検討した。【方法】2017年1月から2019年1月までに当院で心臓手術を行った3kg以下の乳児を術後頸静脈血栓形成の有無により2群に分け(O群:閉塞、P群:開存)、患者背景、手術内容、術後経過について後方視的に比較検討した。血栓はエコー、カテーテル検査により判定し、血栓の有無が判断できないもの、術後ECMO装着患者、CV留置を要しなかった患者は除外し、術後72時間以内に再手術を行った症例は1回目の手術でカウントした。連続変数は平均±SDで示しWilcoxon検定を、カテゴリー変数にはFisher検定を行なった。P値<0.05を有意差ありとした。【結果】61人の患者に67回の手術が行われ、O群13件、P群53件であった。在胎週数、出生体重、手術時体重に有意差を認めなかった。単心室循環の割合は17件(32%)、5件(39%)と差を認めなかった。体外循環を要する手術はO群で多く(77% vs 42%, p=0.03)、手術時人工心肺時間、大動脈遮断時間は有意にO群で長かった(287±92 min vs 177±86 min, p=0.002; 144±62 min vs 85±48 min, p=0.008)。CV留置期間、閉胸までの期間もO群で長かった(6±3 days vs 4±2 days, p=0.018; 7.2±6.4 days vs 2.5±3.1 days, p=0.012)。またO群では有意に乳糜胸合併率が高く(54% vs 6%, p=0.0002)、胸腔ドレーン留置期間、入院期間が長かった(19.7±9.6 days vs 4.6±2.5 days, p=0.0005; 25±22 days vs 54±42 days, p=0.03)。死亡例はO群で2例認めた。【考察】手術侵襲が大きく、CV留置期間も長期に必要になる症例では頸静脈血栓閉塞のリスクが高くなることが推察された。血栓閉塞を生じた症例では乳糜胸合併が多く、入院期間が長期化しており、CVの早期抜去、入れ替えなど積極的な血栓対策が重要と考えられた。