[I-P06-01] Fontan循環における肝線維化の指標に関する検討
Keywords:Fontan手術, Fontan関連肝疾患, 肝線維化
【背景】近年、Fontan手術の遠隔期合併症として肝障害が注目され、Fontan関連肝疾患(FALD)と呼称されている。慢性的な静脈圧上昇に続く肝線維化がその病態であるとされるが、詳細は不明である。FALDにおける肝線維化の進行度を正確に評価しうる有力な指標は現時点で報告されていない。今回、我々は消化器内科領域で近年注目されている肝線維化マーカーを用い、Fontan術後患者肝機能の評価を試みた。【対象・方法】対象はFontan術後で当科フォロー中の患者8名。8例とも男性で年齢は14-28歳(中央値21)、術後12-19年(中央値16)経過。全例開窓のないextra cardiac TCPCで、主心室は左室と右室がそれぞれ4例ずつ。この8例について従来用いられてきた肝線維化マーカーであるヒアルロン酸、IV型コラーゲン7Sに加え新しいマーカーであるMac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体(M2BPGi)、FIB-4 index(FIB4)、肝線維化を評価するエコー手法である剪断波流速(Shear wave elastography、SWE)について検討、更に中心静脈圧(CVP)や術後年数、主心室との相関や関連を検討した。【結果】ヒアルロン酸、IV型コラーゲン7Sは共に8例中5例でカットオフ値を超えたが、M2BPGiやFIB4はいずれもカットオフ値以下であった。SWEは5例でカットオフ値を超えた。SWEとヒアルロン酸・IV型コラーゲン7S・M2BPGi・FIB4には有意な相関がなく、これら5種の指標とCVPおよび術後年数との比較では、FIB4と術後年数にのみ有意な正の相関を認めた。また主心室が左室か右室かで各指標に有意差はなかった。【考察】症例数が少なく追加検討が必要だが、各指標間に有意な関連が見いだせなかった。今回検索した各指標は細胞障害が主となるウイルス性肝炎などで主に用いられるもので、中心静脈圧の上昇とそれに続くうっ血肝に起因するFALDは病態が異なる。FALDの病態に即した新しいマーカーの開発が望まれる。