[I-P10-03] 拘束型心筋症の心機能と血行動態の評価におけるVFMの有用性
キーワード:拘束型心筋症, VFM, 心機能
【緒言】超音波Vector Flow Mapping(VFM)ではカラードップラーやスペックルトラキング法によるデータを基に血流ベクトル、相対圧較差、エネルギー損失(Energy Loss、EL)を描出することができる。【目的】VFMを用いて拘束型心筋症(RCM)における左室(LV)と左房(LA)内の血流ベクトル、相対的圧較差、ELを計測することで、RCMにおける血行動態の特徴を明らかにすること。【対象と方法】対象はRCMの7歳男児と正常コントロール1例(NC)とした。心臓超音波検査で左室3腔断面を描出し、VFMを用いてLV内の血流ベクトル、EL、LVとLA間の相対圧較差を計測した。【結果】RCM症例はEF60%、E/A2.1、E/e’5.7、MPI0.63であった。NCでは等容拡張期にLV流入部から心尖部にかけて低圧になり、左室充満期ではLVよりLAは高圧になり血流ベクトルはLAからLVへ向かう。RCMでは等容拡張期はNCと同様であったが、左室充満期で僧帽弁が開いた直後と閉じる直前にLAよりLVが高圧になり血流ベクトルがLVからLAへ向かう時相が存在した。等容収縮期ではLV流出路より心尖部が高圧となりNCとRCMは同様であった。ELではNC、RCMともに1心拍中の等容拡張期と等容収縮期にELが高値になるが、NCでは等容拡張期が等容収縮期より4倍高値であったのに比べ、RCMでは等容収縮期で等容拡張期より約4倍高値であった。【考察】RCM症例では拡張期にLAよりLVが高圧になる時相があり、LAからLVへ効率よく血液が流入できないだけでなく逆流しており強い拡張障害を示していると考えられた。収縮期におけるELは非常に大きく、RCMは拡張障害のみならず、収縮期の左室内乱流が血流効率を低下させている。VFMを応用することで、RCMの特徴的な血行動態を評価できたと考えている。