[I-P13-02] 小児Brugada症候群に見られるSCN5A遺伝子変異の特徴
Keywords:Brugada症候群, SCN5A, pore
【背景】Brugada症候群(BrS)は、特徴的なST上昇を示す頻度が経年的に増加し、青壮年期に致死性不整脈を起こす。小児期は心電図変化や不整脈が少なく診断困難なことが多い。BrSは多因子遺伝病とされるが、小児期は青壮年期と比較し加齢など環境因子の交絡が少ないため、小児BrSの遺伝子変異は、症状との関連性評価に有用な可能性がある。【方法】18歳以下で診断され当科通院中の小児BrS患者について臨床経過とSCN5A遺伝子変異について後方視的に検討した。BrSの診断はCoved型心電図により行った。【結果】対象は12名の小児BrS患者(診断時年齢中央値 11歳(2-17歳)、男性:女性=11:1)。11名で遺伝子検査を実施し、8例(73%)にSCN5A遺伝子変異(Q55X、D349N、H558R、F851S、R1316X、W1345C、P1372R)を認めた。BrSの家族歴を有する4例全員に変異が認められた。若年性突然死の家族歴を有する症例はF851Sの変異を認めた。心室頻拍は2例(H558R、P1372R)で認めた。【考察】小児BrSのSCN5A遺伝子変異の陽性率は、成人BrSの11-28%より極めて高く、成人では遺伝子変異以外の因子が強く影響している可能性が考えられる。Q55XはN-terminus、H558Rはinterdomain linker(IDL)、R1316Xはtransmembrane region、それ以外の4つはpore regionだった。小児発症BrSではpore regionの突然変異が多い可能性がある。H558Rは比較的多いSNPだが、IDLは蛋白質メチル化やリン酸化のhot spotとして知られる。H558Rは心室性不整脈を抑制するとの報告があるが、本研究では2歳で心室頻拍を起こしており、IDLの何らかの翻訳後修飾により不整脈を起こす可能性が示唆された。