[I-P15-03] 先天性大動脈弁狭窄症の経時的な所見の変化を踏まえた治療戦略
キーワード:先天性大動脈弁狭窄症, 二心室修復術, 成長
【背景】先天性大動脈弁狭窄症(cAS)において,大動脈弁輪径(AVD)のz valueや大動脈弁形態などを用いて,治療介入後の大動脈弁狭窄残存を予測・検討するが,明確な基準はない.またVSDなど合併奇形がある場合判断は更に困難となる.今回我々はcASを伴う症例で経過観察中AVDの成長が見られ,大動脈弁が単独で機能しうると判断した3症例を経験した.【症例1】大動脈弓離断,VSD男児.日齢14(初診時)にAVD z=-4.0であり,Ross-Konno術の方針で両側肺動脈絞扼術(bil. PAB)を施行した.月齢7でAVD z=-2.5と成長を認め初診時に不明瞭であった大動脈弁形態も正常構造と確認できたため,月齢8にarch repair,心内修復術(ICR)を施行した.術後大動脈弁での圧格差は9mmHgであった.【症例2】大動脈縮窄複合,大動脈二尖弁,VSD女児。出生時AVD z=-2.4でYasui 手術を視野にbil. PABを施行した.月齢3でAVD z=-1.4と成長を認めarch repair,ICRの方針となり現在待機中である.【症例3】大動脈二尖弁,borderline LV男児.胎児期に上行大動脈まで逆行性血流を認めNorwood術の方針だったが,出生時AVD z=-4.0,日齢9にz=-2.9と成長を認め,日齢17に動脈管結紮術のみ施行した.月齢3でAVD z=-1.9で大動脈弁での圧格差は15mmHgであった.【考察】3症例ともに初診時に大動脈弁単独で機能できないと判断されたが,管理中にAVDの成長gを認め方針を変更出来た.また二尖弁でも成長が得られていた.経過観察期間を持つことで体格の成長が得られるとともに,AVDの経時的変化や弁形態の詳細な確認が可能となる.一方で,治療法変更に至るまでの期間は0ヶ月から7ヶ月と症例によって異なり,慎重な観察が必要である.【結語】cASを伴い外科的介入後にASが危惧される症例において,循環動態を安定化させる姑息的手段を先行させ経時的に観察する事で大動脈弁輪径の成長を得られる可能性が示唆された.長期予後については更なる検討が必要である.