[I-P15-05] 当院における重度総動脈幹弁閉鎖不全に対する早期弁形成術の検討
キーワード:総動脈幹症, 総動脈幹弁逆流, 弁形成術
【背景】総動脈幹症(TAC)の多くは、新生児時期早期に肺血流増多を伴う心不全症状が顕在化して、外科的治療介入が必要となる。予後を決定する因子として総動脈幹弁閉鎖不全(TrR)がある。【目的】当院におけるTACのTrRの程度および弁の形態、弁に対する外科的治療介入の必要度、方法について検討する。【方法】2011年~2018年に手術を行ったTAC 14例のうち、単心室症、部分肺静脈還流異常症の2例を除外した12例について診療録を後方視的に検討した。Collett-Edwards分類では、1型9例、2型3例であり、合併疾患はCoA 2例、IAA 1例を認めた。【結果】一期的修復術(ICR群)は7例、両側肺動脈絞扼手術(bPAB群)を経た修復術は5例あった。総動脈幹弁は四尖4例、三尖8例であり、TrRの程度はnon 1例、trivial 5例、mild 2例、moderate 4例であった。moderate未満の8例で弁形成に至った例はなく、右室形成術後のIEから弁置換を要した1例がいた。一方、moderateは全例四尖であり、内3例は初回に弁形成術を含むICRを施行した。1例はIAAのductal shockのためbPABを経て修復術に進んだ。弁形成法は、2例が交連縫合による二尖化で、2例は尾崎法を施行した。これらの内2例は体重5.7kg、15.4kgまで待機可能で弁置換に至り、1例は観察中である。bPAB群は上記1例を除き、体重増加を得て修復術に至っている。全体の死亡例は3例で、ICR群で1例、bPAB群で2例いた。【考察】当院のTACに対する治療戦略は、出生体重3kg以上はICR。3kg以下ではPABを挟み体重増加を図る。但し、大動脈弓修復を要する例や、TrR moderate以上の例では一期的二心室修復を行い、術中で順行性心停止を得にくいなどの場合は弁への介入は不可避としている。重度のTrRを伴う1例においてshock状態離脱目的に施行したbPABは結果としてTrRを増悪させた。【結語】予後不良と考えられる重度のTrRを伴う症例に対して、ICRおよび弁形成を行う事で予後の改善に寄与出来ている。