[I-P17-04] Fontan型手術後の難治性乳び胸に対するリンパ管インターベンションの1例
キーワード:難治性乳び胸, リンパ管造影, 術後合併症
【背景】先天性心疾患術後に,胸管損傷あるいは中心静脈圧上昇による乳び胸の発症はまれではない.特にFontan型手術後の難治性乳糜胸は,長期的に栄養障害や呼吸障害を来たし予後不良とされる.強力な利尿剤投与や体肺側副血管塞栓術といった従来の治療に抵抗性の場合は,リンパ管へのカテーテル介入が有効であると報告されているが,小児患者を対象とした治療経験は少ない.【症例】在胎37週4日に出生した女児,出生直後に重篤な低酸素血症を呈し,心房中隔閉鎖と冠動脈左室瘻を伴う左心低形成症候群と診断された.日齢0に心房中隔開窓術と両側肺動脈絞扼術,日齢30にNorwood手術と三尖弁形成術を行なった.月齢6に両方向性Glenn手術,3歳7ヶ月(体重9.6kg)に心外導管型TCPC手術(18mm心外導管)に到達した.術後3週間後に左乳び胸を発症し,胸腔ドレナージ及び内科的治療にて一旦軽快して術後2ヶ月後に退院した.外来経過中に左胸水貯留が再燃し,気道感染に伴い左乳び胸増悪により入院を繰り返した.利尿剤と食事療法による加療を行ったが,良好なコントロールを得られなかった.静脈圧低下を図り心臓カテーテルにて側副血行路に対するコイル血管塞栓術を行うも,側副血行路の再開通を繰り返した.5歳5ヶ月にリンパ管造影による胸管塞栓効果を期待しリピオドールによるリンパ管造影を施行し,リピオドールとヒストアクリルの混合液 (n-butyl-2-cyanoacrylat, NBCA) による完全な血管塞栓術を行った.胸水の改善が得られ,利尿剤を減量しながら外来フォローを継続している.【結論】乳び胸に対するカテーテル介入に関しては,小児患者においてもリピオドールリンパ管造影によるリンパ瘻塞栓術の治療効果は期待できる.また,コイル塞栓後に再開通した側副血管路に対してNBCAによる血管塞栓術の同時施行も考慮される.