[I-P30-02] 早期からの安静、酸素投与により良好な周産期経過を得たFontan術後の前置胎盤母体の1例
キーワード:Fontan術後, 心疾患合併妊娠, 成人先天性心疾患
【背景】近年、Fontan術後の長期予後改善に伴い、術後の妊娠出産例の報告が増えている。Fontan術後の母体は循環動態の変化によって不整脈や心不全、さらに凝固能亢進による血栓症など様々な合併症を生じることが知られている。今回、早期からの安静、酸素投与にて良好な周産期経過を得たFontan術後の母体例を経験したので報告する。【症例】30歳女性、5経妊0経産。三尖弁閉鎖症(Ib)の診断で5歳時にFontan手術を施行された。右肺動静脈瘻による軽度チアノーゼがあり利尿薬、抗血小板薬、抗凝固薬を内服下に定期フォローされていた。4回の妊娠歴があるが自然流産3回、子宮内胎児死亡1回の既往がある。自然妊娠し、妊娠6週よりワルファリンをヘパリン皮下注へ変更し、産婦人科で管理されていた。妊娠19週3日、多量の性器出血があり、前置胎盤、切迫流産の診断で当院産婦人科へ入院した。入院時の心エコーでは左心機能は保たれており、有意な弁逆流は認めず、良好なFontan循環を保持できていると考えられた。入院後より安静、酸素投与を開始した。妊娠30週0日、突然の性器出血、子宮収縮も認め、緊急帝王切開で954 gの女児を分娩した。出産後は周産期合併症、心血管合併症なく退院した。【考察】Fontan術後の妊娠に関しては本症例でも4回の流産、死産があるように流産率が高いとされている。また、早産や子宮内胎児発育遅延も多く、出産に伴う合併症としては循環血液量の急激な増加に伴い、心不全の増悪や不整脈、凝固能亢進に伴う血栓形成などの報告がある。本症例では早産、超低出生体重児であったが、目立った心血管合併症を認めなかった。前置胎盤による警告出血があり、早期に入院管理を行い安静を保てたこと、循環血液量の増加がピークに達する前の妊娠30週に出産したことが循環動態を崩さず、良好な周産期経過であった要因であると推測される。