[I-P30-04] 未分化ヘパリン持続投与で管理した大動脈弁置換術後合併妊娠に認めた血栓弁の一例
Keywords:大動脈弁置換術後合併妊娠, 血栓弁, 未分化ヘパリン
【はじめに】機械弁術後妊娠は死亡率が高く、厳密な抗凝固療法を必要とされる。ワーファリン(WF)は強固な抗凝固が可能であるが、催奇形性や胎児頭蓋内出血の報告がある。一方、ヘパリン投与は胎児リスクが低いが、血栓症のリスクが増大する。全妊娠期間未分化ヘパリン(UFH)持続静注を選択し、妊娠初期に血栓弁を認めた大動脈弁置換術後合併妊娠を報告する。【症例】母体28歳、大動脈二尖弁による大動脈逆流に対して、3歳でKonno手術+大動脈弁置換術をした。既往血栓症や出血症状は認めていない。妊娠前の検査では虚血所見はなく、心機能と機械弁機能は良好、圧較差29mmHgの大動脈狭窄で、心機能自体は妊娠に耐えうると判断した。2経妊1経産であり、26歳で初回妊娠時はUFH持続静注を全妊娠期間行い正期産で出生した。生後1ヶ月で乳児突然死症候群で死亡している。強い挙児希望で不妊治療により妊娠し、全妊娠期間UFH持続静注を選択し妊娠継続した。APTTは80-100secを目標に投与量を調整したが安定しなかった。妊娠11週に収縮期雑音の増強、超音波検査で大動脈弁狭窄の増悪とtrans valvular leakを認め血栓弁と診断した。UFHに加え、AT3の補充、アスピリン内服を開始し、ACT 200-250secを目標とした管理とした。2日後に急性腹痛を認め、血栓弁を疑う超音波所見が消失、腹部血管の塞栓に伴う腹痛と診断した。自然軽快し妊娠継続としたが、妊娠26週に母体が硬膜下出血を認め開頭血腫除去術を施行、胎児はその直後に早産・超低出生体重児で出生となった。【考察・結語】近年、ACC/AHAやESCでは妊娠初期は5mg以下のWFもしくは初期ヘパリン投与で中期以降はWF投与を推奨している。しかし、WFの胎児合併症のリスクとWF置換後の血栓弁の問題がある。胎児リスクを考慮し全妊娠期間UFH持続静注をし血栓弁と出血症状の双方をきたした。モニタリング下での抗凝固でも合併症を認めることがあり、さらなる症例の蓄積が必要である。