第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

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ポスターセッション

肺循環・肺高血圧

ポスターセッション31(I-P31)
肺循環・肺高血圧 1

Thu. Jun 27, 2019 5:40 PM - 6:40 PM ポスター会場 (大ホールB)

座長:西山 光則(恵愛病院 小児科)

[I-P31-03] 2歳体重10kgのIPAHに対する脳死肺移植の経験

橋本 和久1, 石田 秀和1, 石垣 俊1, 石井 良1, 成田 淳1, 澁田 昌一4, 武内 崇5, 上野 高義3, 舟木 壮一郎2, 南 正人2, 大薗 恵一1 (1.大阪大学大学院医学系研究科 小児科学, 2.大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器外科学, 3.大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科学, 4.紀南病院 小児科, 5.和歌山県立医科大学 小児科)

Keywords:肺移植, 特発性肺動脈性肺高血圧症, 脳死肺移植

【背景】特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)は進行性の難治疾患であり、様々な治療薬が利用可能な現在においても重症例は肺移植を避けられない。今回2歳10kgで脳死肺移植を施行したIPAHの1例を報告する。【症例】2歳6ヶ月女児。8ヶ月時に自宅でショック状態となり蘇生。心エコーにて肺高血圧が疑われ前医に転院。心構造異常なくTRPG 91mmHgでIPAHと診断され、シルデナフィル、ベラプロスト、ボセンタンの投与が開始された。3ヶ月後にTRPG 120mmHgまで増悪し再度PH crisis起こしたため、人工呼吸管理の上NO吸入とエポプロステノール(Epo)開始し54ng/kg/minまで増量。1歳2ヶ月時の初回心カテでは、PA 78/38(58)mmHg, Ao 66/40(52)mmHg, PVRI 15.7 WU・m2, CI 2.9L/min/m2であった(全麻下, FiO2 0.4)。その後Epoは100ng/kg/minまで増量したがTRPGは70-100mmHgで推移し、7ヶ月後(1歳9ヶ月)ではPA 70/28(44)mmHg, Ao 80/38(50)mmHg, PVRI 12.9 WU・m2, CI 3.1L/min/m2 で改善は乏しかった(全麻下, FiO2 0.3)。酸素負荷にも反応なく、高用量のPGI2を含むcombination therapyにも関わらず、重度の肺高血圧が持続し心エコーで著明な右室拡大と肥大も認めたため、内科的治療の限界と判断し肺移植適応申請。2歳3ヶ月時に臓器移植ネットワーク登録。2歳6ヶ月時に脳死両肺移植術施行。当院内で同時に心移植もあり心肺ブロックで摘出し搬送後に分離。虚血時間は7時間13分。移植後はタクロリムス, MMF, PSLで免疫抑制を開始。Epoは術後1週間で漸減中止した。術後2か月の心カテではPA 29/17(19)mmHg, PVRI 1.6 WU・m2。気管切開要したが、術後1か月で人工呼吸器離脱し小児内科病棟に転棟した。左気管支狭窄に対するバルーン拡張術、CMV感染管理を要したが、3歳現在で心機能、運動能に問題なく気管切開を閉鎖でき外来フォロー中である。【結語】2歳6ヶ月、体重10kgという体格の小さなIPAH患者に対する脳死肺移植を経験した。