[I-P31-05] 小児肺動脈性肺高血圧の初期診断における課題 -最近の症例から-
Keywords:肺高血圧, 診断, 肺動脈性肺高血圧
【背景】肺動脈性肺高血圧(PAH)は、遺伝子異常や先天性心疾患等に伴う予後不良疾患であるが、近年、治療薬の開発により予後の改善を認める。一方で、初期症状(労作時の息切れ、倦怠感など)は非特異的であり、症状出現からPAH診断まで約1.5年と報告され、治療の進歩と対照的に、初期診断に関しては過去20年以上進歩が乏しいとされる。【目的】最近の症例から、初期診断について考察する。【症例】(1)5歳男児。6か月前、けいれんを認めA病院を受診し、4か月前、B病院にてバルプロ酸を開始。搬送当日、発作あり、ジアゼパム坐剤で頓挫後心肺停止となり搬送されたが死亡。剖検にて高度肺血管病変とBMPR2変異を認め遺伝性PAHと診断した。(2)5歳女児。意識消失にて受診し、アナフィラキシーとして初期対応され、後の検査で肺動脈拡大、肝腫瘍を認め紹介。転院後、先天性門脈大静脈シャントと診断し肝移植(LT)の適応としたが、高度PH(mPAP 35mmHg)を認め、初期多剤併用療法を先行し、PAH改善後LTを行った。LT後増悪なく経過。(3) 14歳男児。15か月前から労作時息切れ、11か月前から、血痰あり。1か月前、立ちくらみから倒れ回復後、前医を受診し貧血を認め鉄剤で治療。血痰精査の胸部CTで肺動脈拡大を認め紹介。心カテでmPAP 31mm Hg、造影にて先天性肺静脈狭窄と診断。(4) 染色体異常を伴う重度発達遅滞の13歳男児。10歳時に学校健診でASDと診断。初診時PHなく閉鎖適応であるが、家族の意向で経過観察。13歳時、心電図上右室肥大を呈し、心カテでmPAP 39mm Hg、PVRI 8.0 WU*m2。PAH標的治療にて観察中である。【考察】小児PAHは多彩な病態に伴い、実践診療において、倦怠、失神、労作時息切れ等の症状から、PAHを疑うことは一般には容易ではない現状が窺われた。【結語】PAHに効果的な治療法が開発され、早期治療の利益が示されているが、PAHの初期診断への取り組みは、以前より重要性が高まっている課題と考えた。