[I-P32-04] treat and repair を行った肺血管抵抗の高い心室中隔欠損の1例
キーワード:心室中隔欠損, 肺高血圧, 手術適応
【はじめに】欠損孔が大きく肺高血圧を合併した心室中隔欠損は、早期に手術を行うことにより術後の肺高血圧は改善すると言われている。しかし、肺血管抵抗がすでに高い心室中隔欠損については、手術により死亡するケースが報告されており、治療方針に苦慮することがある。今回我々は、生後より肺血管抵抗が高く推移した心室中隔欠損に対して、肺血管拡張剤を導入することで肺血管抵抗を下げて手術に到達し、術後経過も安定した症例を経験したので報告する。【症例】2ヶ月男児。36週1日、2442gで仮死なく出生し、生後11日で心雑音を聴取され心室中隔欠損と診断された。欠損孔は6-7mmで、利尿剤投与で経過観察されたが肺高血圧が残存し、呼吸苦無く体重増加良好であり、高い肺血管抵抗による肺高血圧を疑われ生後2ヶ月で当院を紹介された。当院受診後も呼吸苦の出現はなく、生後3ヶ月時に心臓カテーテル検査を施行したところ、肺動脈圧85/42(58) mmHg, 肺血管抵抗13.43 U・m2と高い結果であった。タダラフィル、マシテンタンを導入したところ多呼吸が出現し、体重増加も乏しくなった。生後5ヶ月で心臓カテーテル検査を再度施行したところ、肺動脈圧は84/37(59) mmHgと変化は無かったが、肺血管抵抗が7.48U・m2と低下し、酸素負荷により肺血管抵抗は4.16U・m2までさらに低下したため、生後7ヶ月で心室中隔欠損閉鎖術を施行した。術後2日で抜管でき、肺血管拡張剤を内服継続し、エコー上肺高血圧無く安定している。【考察・まとめ】肺高血圧症治療ガイドライン2017年改訂版によると、肺血管抵抗が8U・m2以上の場合は急性血管反応試験で6U・m2以下になる時に手術適応とされている。初回の心臓カテーテル検査では手術適応から外れたが、肺血管拡張剤の導入により今までなら手術不可と考えられていた高い肺血管抵抗の肺高血圧を合併した心室中隔欠損でも、手術を行うことができた。今後も経過に注意する必要がある。