[I-P34-02] セレキシパグが奏効し、Glenn手術への道が開かれた左心低形成症候群亜型の1乳児例
キーワード:セレキシパグ, 肺高血圧, 左心低形成症候群
【はじめに】これまで当院において、小児の肺高血圧症 (PH)に対する経口薬としては主にホスホジエステラーゼ5阻害薬 (PDE5i)とエンドセリン受容体拮抗薬 (ERA)で治療を行っていた。セレキシパグは2016年に発売開始された半減期の長い経口のプロスタサイクリン受容体選択的作動薬 (PGI2)であるが、小児における使用経験は乏しく、特に乳児例における報告はほとんどない。セレキシパグが奏効した左心低形成症候群亜型の1乳児例を報告する。【症例】生後11か月女児。左心低形成症候群亜型(MA, AA, VSD, hypoplastic LV, hypoplastic aortic arch)と診断され、日齢2に両側肺動脈絞扼術、日齢58にmodified Norwood手術が施行された。その後、左横隔神経麻痺、両側肺動脈分岐部狭窄を原因とする低酸素血症悪化が問題となり、左横隔膜縫縮術と経皮的肺動脈形成術が施行された。低酸素血症の原因としてPHも疑われたためPDE5iとERAも経過中に導入されている。生後4か月時に施行された心臓カテーテル検査では平均肺動脈圧 (mPAP) 16mmHg、肺血管抵抗 (PVR) 2.1 単位・m2であったが、その後手術待機中に呼吸器感染を繰り返し、生後6か月時に再評価したところ、mPAP 25mmHg、PVR 5.5 単位・m2とPHが増悪し、Glenn手術の適応外と判断された。すでに導入していたPDE5iとERAの増量を行ったが、酸素化の改善に乏しく、セレキシパグを導入した。0.004mg/kg/dayから開始し0.03mg/kg/dayまで漸増したところ、酸素化が改善し、生後11か月時の心臓カテーテル検査では、mPAP 19mmHg、PVR 2.1 単位・m2と改善が得られた。経過中にセレキシパグによる副作用は見られなかった。グレン手術の適応と判断され、現在手術待機中である。【考察とまとめ】乳児症例に対してもセレキシパグが安全に使用でき、かつ臨床的に有効であった。今後、小児PH患者の治療において一翼を担うことが期待される。