第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム1(I-S01)
川崎病:急性期治療から遠隔予後解明にむけた連携

2019年6月27日(木) 14:50 〜 16:20 第1会場 (特別会議場)

座長:鮎澤 衛(日本大学医学部 小児科学系小児科学分野)
座長:深澤 隆治(日本医科大学 小児科)

[I-S01-04] 冠動脈瘤をともなう川崎病患者の多施設共同研究(ZSP2とKIDACR):国際評価に挑む

三浦 大1,2, 小林 徹2, 沼野 藤人2, 菅沼 栄介2, 三澤 正弘2, 土井 庄三郎2, 塩野 淳子2, 加藤 太一2, 古野 憲司2, 深澤 隆治2 (1.東京都立小児総合医療センター 循環器科, 2.日本川崎病学会 KIDCAR研究グループ)

キーワード:川崎病, 冠動脈瘤, 冠動脈イベント

【背景】免疫グロブリン療法(IVIG)や不応例の治療が進歩した現代でも,川崎病(KD)患者に冠動脈瘤(CAA)が発生し冠動脈イベント(CE)を起こすことがあるが,管理法のエビデンスは確立していない.そこで,多施設共同研究により,1)後向きコホート研究(ZSP2)を実施し,2)レジストリ研究(KIDCAR)を開始した.【方法】1)1992~2011年に冠動脈造影を行ったKD患者を対象に,急性期心エコーの冠動脈瘤内径のZスコアを基に小瘤,中等瘤,巨大瘤に分類し,CE(血栓形成,狭窄,閉塞)の回避率とリスク因子を検討した.2)2015年以降に発症し,30病日以降の心エコーで内径4 mm以上かZスコア5以上のCAAを合併したKD患者を登録し,EDCシステムを用い臨床データを経年的に収集する.【成績】1)44施設から報告があり急性期の心エコーデータのある1,006例のうち,Zスコアによる分類が可能な832例を解析した.小瘤,中等瘤,巨大瘤の10年後のCE回避率は100%, 96%, 61%で,それぞれ男100%, 94%, 52%,女100%,100%,75%と性差を認めた(いずれもP < 0.001).有意なリスク因子とハザード比 (95%信頼区間)は,巨大瘤8.9 (5.1-15.4),男2.8 (1.7-4.8),IVIG不応例2.2 (1.4-3.6)であった.2)2018年までに47施設から110例(月齢3~218,中央値31,男85例)が登録された.右冠動脈は巨大瘤10例,中等瘤61例,左冠動脈は巨大瘤8例,中等瘤76例で,いずれかに巨大瘤を認めた例は11例(10%)あった.IVIGは106例に使用され,4病日以内の開始は53例,8病日以降は19例(17%)であった.IVIG不応例は78例(72%)を占め,このうち58例に3rdライン以上の追加治療が行われていた.ワルファリンは58例(53%)に投与され,CEが生じた5例は全例ワルファリンを服用していた.【結語】内径のZスコアによる巨大瘤,特に男とIVIG不応例では,CEの発生に注意が必要である.構築できたレジストリ研究を基盤に,CAAの適切な管理法に関する研究を発展させたい.