[I-S03-06] 胎児QT延長症候群の診断と管理の問題点
Keywords:胎児QT延長症候群, 胎児心拍数, 家族歴
先天性QT延長症候群(LQTS)は持続する洞性徐脈、房室ブロック(AVB)、Torsades de pointes(TdP)が診断の手がかりになる。家族内集積は必ずしも多くない。AVBやTdPは胎児LQTSの25%未満であり、重篤なイベント前のLQTSの胎児診断は容易ではない。【目的】胎児徐脈あるいはLQTSの家族歴をもつ胎児で、徐脈の鑑別診断や管理の問題点を検討した。【対象】2010年1月~2019年2月までに当院に紹介された、一過性徐脈7例を除く胎児心拍数(FHR)≦120bpmの胎児21例、LQTSの家族歴を有する胎児8例の計27例(重複2例)。【方法】胎児心エコーと胎児心磁図で診断し、出生後まで経過を追跡した。【結果】胎児徐脈21例の内訳は、完全房室ブロック5例(抗SS-A抗体陽性)、異所性調律4例、ブロックを伴う上室期外収縮の二段脈(Blocked atrial bigeminy;BAB)3例、洞機能不全疑い1例、一過性2:1AVB1例、QT延長7例であった。QT延長7例のうちLQTSは 3例(KCNQ1,KCNH2,SCN5Aの変異)で、一過性QT延長2例、多脾症1例、母体抗SS-A抗体陽性1例であった。LQTS 3例中、AVB非合併は2例でFHRは114、120bpm(<3%タイル)であった。非持続性心室頻拍(NSVT)を呈したLQT2はQTc 638msecで、胎内治療としてナドロールを開始しNSVTが消失した。LQTSの家族歴を有する胎児8例のうち5例は妊娠までの間に通院や内服の中断がみられ、ICD植込みは2例に認められた。遺伝子型不明が3例、LQT1が2例、LQT2が3例。LQTS家族歴8例中6例のFHR 144±4.6bpmだったが、1例で出生後にLQTSと診断された。【考察】妊娠週数における標準FHR<3%タイルの所見や、左室等容弛緩時間(LVIRT)の延長が胎児LQTS検出率を上げる報告がある。【結語】AVBやTdPのない、あるいは家族歴がない胎児LQTSはFHRが診断に重要で、心電図は出生後まで経過追跡した方がよい。β遮断薬や通院を自己中断するケースがあり、施設内・他施設間での小児循環器・循環器内科・産科との協力が必要である。