[I-S04-03] 虚血再灌流モデルマウスを用いた心不全に対するミトコンドリア活性化心筋幹細胞を用いた細胞移植療法の治療効果の検討
キーワード:ミトコンドリア, 細胞移植, 心筋幹細胞
【背景】心筋幹細胞移植は、心不全に対する有望な治療法として臨床試験も多数行われており、有用性が認められている。しかし、その一方で、移植細胞の低生着率などが問題となっており、心臓への細胞移植療法の克服すべき課題がある。そこで我々は、ミトコンドリア(Mt)を標的としたドラックデリバリーシステム(DDS)を用い、移植細胞のMtに選択的に抗酸化薬剤を送達することでMtを強化したMt活性化幹細胞(MITO-Cell)の作成をおこなった。当研究室ではドキソルビシン心筋症モデルマウスに対してのMITO-Cell移植による予防効果を証明した。【目的】本研究ではMITO-Cell移植の治療効果の証明のため、心筋虚血再灌流モデルマウスを作成し、MITO-Cell用いた心筋幹細胞移植療法による治療効果の検討を行った。【方法】C57BL/6 ♂ 6週齢の心臓からマウス心筋幹細胞(cardiac progenitor cells: CPC)を単離培養した。CPCにMt DDSを用いて抗酸化剤(レスベラトロール)をMtへ導入したMITO-cellを作成した。C57BL/6 ♀ 8-12週齢のマウスを用いて虚血再灌流モデルマウスを作成し、CPCおよび、MITO-Cell移植を行い、30日後に治療効果を判定した。【結果】虚血心筋へのMITO-Cell移植は、非移植群、CPC群と比較し術後の体重増加を認め、心臓超音波検査による心機能評価では改善を示し、さらに組織学的な線維化の抑制を認めた。【考察】MITO-Cellを用いた心臓幹細胞移植療法は既存の幹細胞移植療法に比べより良い治療効果を認めた。移植細胞のMtに対し選択的に抗酸化剤を導入することで細胞移植効果が増強したと考えられる。MITO-Cellは心筋への移植細胞定着が増加しMITO-Cell自身が心筋などに分化したことに加え、虚血に対するストレスに対し心筋内の微小環境の改善が示唆された。【結論】MITO-Cellは移植細胞の生存率、増殖率、生着率を高めることができる可能性を示唆しており、細胞移植療法自体の問題点を解決できる可能性がある。