[II-OR21-02] 川崎病罹患後3年までの冠状動脈瘤における組織学的石灰化
キーワード:川崎病, 冠状動脈瘤, 石灰化
【目的】川崎病の急性期に冠状動脈瘤が形成されると、遠隔期には瘤部に高度の石灰化を伴う。この石灰化の組織学的な発生時期と局在について検討した。【対象】川崎病罹患後3年以内に死亡した川崎病剖検例50例、冠状動脈87枝のうち、冠状動脈瘤の形成をみた37例、62枝(剖検時年齢:2ヵ月~9歳、性別:男児24例、女児13例、発症後日数:10日~2年3ヶ月)。【方法】HE、EVG標本を観察し、瘤径、瘤内血栓、血栓器質化、石灰化の有無、局在と石灰化周囲の組織所見を検索した。石灰化はダール法にて赤染したものと定義した。【結果】51枝に瘤内血栓の形成をみた。血栓は、新鮮血栓から蓮根状の再疎通像を伴う器質化血栓まで様々な器質化の段階を示しており、再疎通像は発症後5ヶ月以降の3枝に観察された。組織学的な石灰化は62枝中13枝に観察され、13枝中12枝は瘤内血栓を伴う枝に認められた。瘤内に血栓がない18枝のうち、石灰化を認めたのは1枝のみであった。血栓を伴う瘤では、瘤の中心から末梢にかけて、血栓と内膜表面の境界に生じる血栓器質化の領域に一致して顆粒状あるいは小結節状の石灰化が認められ、その最早期例は49病日であった。再疎通像を伴う器質化血栓では3枝すべてに高度な石灰化を認めた。一方、血栓器質化部と関連のない肥厚内膜深部に帯状の石灰化を示す枝が3枝あり、その最早期例は90病日であった。いずれも、石灰化の周囲には新生血管やヘモジデリンの沈着がみられた。【考察】川崎病の冠状動脈瘤における顕微鏡的な石灰化は、遠隔期早期から発生していた。石灰化の局在パターンには、血栓の器質化部と内膜深部の2つがあることが示唆された。特に内膜深部に生じる石灰化は新生血管の局在と一致しており、肥厚内膜深部の新生血管が石灰化の発生に関与する可能性が考えられた。