第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

川崎病・冠動脈・血管

一般口演22(II-OR22)
川崎病・冠動脈・血管 2

2019年6月28日(金) 10:20 〜 11:00 第5会場 (中ホールB)

座長:鮎澤 衛(日本大学医学部 小児科学系小児科学分野)
座長:須田 憲治(久留米大学医学部 小児科学講座)

[II-OR22-02] 川崎病後遠隔期成人における急性冠症候群を来す潜在的基質:Optical Coherence Tomographyによる表現パターンの解析

大橋 啓之1, 三谷 義英1, 寺島 充康2, 坪谷 尚季1, 大矢 和伸1, 淀谷 典子1, 澤田 博文1, 早川 豪俊1, 佐久間 肇3, 伊藤 正明4, 平山 雅浩1 (1.三重大学大学院医学系研究科 小児科学分野, 2.豊橋ハートセンター 循環器内科, 3.三重大学大学院医学系研究科 放射線医学, 4.三重大学大学院医学系研究科 循環器・腎臓内科学)

キーワード:川崎病, OCT, MDCT

【背景】川崎病(KD)遠隔期成人における急性冠症候群(ACS)の機序は不明である.Optical Coherence Tomography(OCT)は組織の高分解能断面画像を提供する技術で,冠動脈内腔からの観察によりACS関連するプラーク成分/血栓が診断可能で,ACS非責任病変においても不安定プラークを検出しえる.KD遠隔期成人の冠動脈において,OCTによる内膜病変の分析を行った.【方法】急性期に6mm以上の冠動脈病変を伴い,急性期から15年以上経過している症例を対象とし,OCT,冠動脈造影(CAG)及び造影多列CT(MDCT)を用いて横断的研究を行った.評価は区域毎に行い,内径1.5 mm以上の区域で検討を行った.【結果】全11人(男:55%)にて検討を行った.年齢は中央値25.3歳(IQR:22.7-30.3; range16.3-32.9),KD後経過年数は中央値22.6年(IQR:19.9-25.8; range15.5-32.1),8/11例で冠動脈リスクファクターを認めなかったが,ゼロカルシウムスコアは1/11例のみであった.病初期から正常(NS)8区域,退縮瘤(RAN)19,持続瘤(PAN)16,局所狭窄(LS)8の,全51区域で評価が可能であった.NS区域では,MDCT上の石灰化内膜肥厚(C-intima),OCT上のfibroatheroma(FA),fibrocalcific plaque(FC),microvessels(MC),thrombi(T),ruptured plaque(RP)のいずれも認めなかった.C-intimaをRAN区域の16%,PANの44%,LSの78%に認め,FAを21%,44%,63%に,FCを32%,44%,88%に,MCを32%,25%,100%に各々認めた.TやRPを認めた区域では,認めない区域に比べて,高頻度にFCとMCを認めた(FC 73%,MC 87% vs FC 32%,MC 18%)が,FAの頻度はほぼ同等であった.OCT上のFC,MCを予測する正確度は,CAGによる内腔診断(FC 69%,MC 65%)よりも,MDCTによるC-intima診断の方が高かった (FC 86%,MC 80%).【結語】KD後遠隔期成人の冠動脈後遺症では,FAよりもFCとMCを主体としたACS基質が示唆され,その予測にはMCDTによる血管壁診断が有効となりえる.