[II-OR22-02] 川崎病後遠隔期成人における急性冠症候群を来す潜在的基質:Optical Coherence Tomographyによる表現パターンの解析
キーワード:川崎病, OCT, MDCT
【背景】川崎病(KD)遠隔期成人における急性冠症候群(ACS)の機序は不明である.Optical Coherence Tomography(OCT)は組織の高分解能断面画像を提供する技術で,冠動脈内腔からの観察によりACS関連するプラーク成分/血栓が診断可能で,ACS非責任病変においても不安定プラークを検出しえる.KD遠隔期成人の冠動脈において,OCTによる内膜病変の分析を行った.【方法】急性期に6mm以上の冠動脈病変を伴い,急性期から15年以上経過している症例を対象とし,OCT,冠動脈造影(CAG)及び造影多列CT(MDCT)を用いて横断的研究を行った.評価は区域毎に行い,内径1.5 mm以上の区域で検討を行った.【結果】全11人(男:55%)にて検討を行った.年齢は中央値25.3歳(IQR:22.7-30.3; range16.3-32.9),KD後経過年数は中央値22.6年(IQR:19.9-25.8; range15.5-32.1),8/11例で冠動脈リスクファクターを認めなかったが,ゼロカルシウムスコアは1/11例のみであった.病初期から正常(NS)8区域,退縮瘤(RAN)19,持続瘤(PAN)16,局所狭窄(LS)8の,全51区域で評価が可能であった.NS区域では,MDCT上の石灰化内膜肥厚(C-intima),OCT上のfibroatheroma(FA),fibrocalcific plaque(FC),microvessels(MC),thrombi(T),ruptured plaque(RP)のいずれも認めなかった.C-intimaをRAN区域の16%,PANの44%,LSの78%に認め,FAを21%,44%,63%に,FCを32%,44%,88%に,MCを32%,25%,100%に各々認めた.TやRPを認めた区域では,認めない区域に比べて,高頻度にFCとMCを認めた(FC 73%,MC 87% vs FC 32%,MC 18%)が,FAの頻度はほぼ同等であった.OCT上のFC,MCを予測する正確度は,CAGによる内腔診断(FC 69%,MC 65%)よりも,MDCTによるC-intima診断の方が高かった (FC 86%,MC 80%).【結語】KD後遠隔期成人の冠動脈後遺症では,FAよりもFCとMCを主体としたACS基質が示唆され,その予測にはMCDTによる血管壁診断が有効となりえる.