[II-OR28-01] Eisenmenger症候群成人例の出血合併症の検討-多施設共同研究ー
キーワード:Eisenmenger syndrome, hamorrhage, prostacyclin
【背景】多施設共同研究の結果では、Eisenmenger症候群の死亡および肺移植回避率は70ヶ月で86%と比較的良好であるが、臨床的悪化回避率は64%と低い。また、喀血を含む出血合併症は、入院例の35%を占め、QOLに影響する重要な合併症である。【目的】喀血を含む出血性合併症の特徴とその関連因子を調べることを目的とした。【方法】Eisenmenger症候群多施設共同研究に登録された88例を対象とし、登録後喀血を含む出血合併症で入院を要した症例の臨床的特徴を調べ、出血群(H群)と非出血群(NH群)の2群を比較検討した。【結果】出血合併症例は6例(男性3例)で、喀血が4例、子宮内出血が1例、消化管出血が1例であった。心疾患は心室中隔欠損5例、動脈管開存1例であった。アスピリン内服例は1例で、喀血後中止していた。喀血4例のうち2例と消化管出血例が経口プロスタサイクリン製剤を中止していた。H群とNH群の比較では、登録時年齢、SPO2、心胸郭比、赤血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値、BNP値等の平均値に有意差を認めなかった。また、WHO-FC≧III、心不全既往等の頻度にも有意差を認めなかったが、登録時プロスタサイクリン使用例の頻度がH群で有意に高かった。(Fisher直接検定p=0.027)【考察】プロスタサイクリン製剤には血小板凝集抑制作用があり、出血合併症への関与が疑われる。また、出血合併症が全例post tricuspid 短絡例であり、この疾患群に対するproactiveなDisease targeting therapyでは、プロスタサイクリン製剤の選択は慎重に行う必要があるかもしれない。【結論】Eisenmenger症候群における喀血を含む出血合併症の一因としてプロスタサイクリン製剤が関与している可能性がある。