[II-OR28-03] Down症における重症肺高血圧合併心房中隔欠損症の予後因子
Keywords:肺高血圧, ダウン症, 心房中隔欠損症
【背景】Down症児では短絡量に見合わない重症肺高血圧を合併する心房中隔欠損症(ASD)をしばしば経験し,治療介入時期の判断に苦慮することも多い.
【対象と方法】重症肺高血圧(体肺動脈圧比:Pp/Ps≧0.75)合併ASDのDown症児6例を対象とし,治療前の心臓カテーテル検査所見を中心にその予後および予後規定因子を検討した. Fick法により体・肺血流量を算出し,肺血管抵抗(Rp)=(肺動脈平均圧-左房圧)/肺血流量,肺血管コンプライアンス(Cp)=一回肺心拍出量/肺動脈脈圧とした.また4例で肺生検も実施した.
【結果】検査時年齢4(1~11)か月,体重4.7(3.8~7.9) kg,出生週数37(35~40)週,出生体重2.6(2.3~3.5) kgだった.ASD径8(3.8~14) mm,肺動脈収縮期圧/平均圧79(66~97)/57(42~60) mmHg,Pp/Ps0.99(0.78~1.13),Qp/Qs1.6(0.6~2.0),Rp7.7(4.6~15.8) WU・m2,Cp0.96(0.63~1.79) ml/mmHg・m2だった.肺生検では肺小動脈の中膜肥厚4例, 肺静脈の高度線維性肥厚2例を認めた. 予後に関しては観察期間9(6~68)か月において死亡3例(全て術前)であった. 3例とも術前Cp<1.00 ml/mmHg・m2と低値であり, うち肺生検施行2例では不可逆性肺血管病変が確認された. 生存3例のうち2例は手術を行い(生後5か月,13か月),術後肺高血圧は改善した. 2例とも術前Cp>1.5 ml/mmHg・m2であった. 残り1例は術前Qp/Qs1.6, Pp/Ps1.10, Rp7.9 WU・m2, Cp0.98 ml/mmHg・m2と予後不良を示唆する検査所見であったが,在宅酸素と肺血管拡張薬で肺高血圧は改善し, その後ASDが自然閉鎖したため手術不要であった. 術前検査時年齢が1か月と早期であったことが検査結果を修飾していた可能性を考えた.
【結語】Pp/Ps≧0.75の重症肺高血圧合併心房中隔欠損症のDown症児の予後は不良であり, Cpがその予後と関連する可能性を示唆した. ただし検査時期は生理的な肺循環の変化が確立された生後2~3か月を過ぎてからが望ましいと考えた.
【対象と方法】重症肺高血圧(体肺動脈圧比:Pp/Ps≧0.75)合併ASDのDown症児6例を対象とし,治療前の心臓カテーテル検査所見を中心にその予後および予後規定因子を検討した. Fick法により体・肺血流量を算出し,肺血管抵抗(Rp)=(肺動脈平均圧-左房圧)/肺血流量,肺血管コンプライアンス(Cp)=一回肺心拍出量/肺動脈脈圧とした.また4例で肺生検も実施した.
【結果】検査時年齢4(1~11)か月,体重4.7(3.8~7.9) kg,出生週数37(35~40)週,出生体重2.6(2.3~3.5) kgだった.ASD径8(3.8~14) mm,肺動脈収縮期圧/平均圧79(66~97)/57(42~60) mmHg,Pp/Ps0.99(0.78~1.13),Qp/Qs1.6(0.6~2.0),Rp7.7(4.6~15.8) WU・m2,Cp0.96(0.63~1.79) ml/mmHg・m2だった.肺生検では肺小動脈の中膜肥厚4例, 肺静脈の高度線維性肥厚2例を認めた. 予後に関しては観察期間9(6~68)か月において死亡3例(全て術前)であった. 3例とも術前Cp<1.00 ml/mmHg・m2と低値であり, うち肺生検施行2例では不可逆性肺血管病変が確認された. 生存3例のうち2例は手術を行い(生後5か月,13か月),術後肺高血圧は改善した. 2例とも術前Cp>1.5 ml/mmHg・m2であった. 残り1例は術前Qp/Qs1.6, Pp/Ps1.10, Rp7.9 WU・m2, Cp0.98 ml/mmHg・m2と予後不良を示唆する検査所見であったが,在宅酸素と肺血管拡張薬で肺高血圧は改善し, その後ASDが自然閉鎖したため手術不要であった. 術前検査時年齢が1か月と早期であったことが検査結果を修飾していた可能性を考えた.
【結語】Pp/Ps≧0.75の重症肺高血圧合併心房中隔欠損症のDown症児の予後は不良であり, Cpがその予後と関連する可能性を示唆した. ただし検査時期は生理的な肺循環の変化が確立された生後2~3か月を過ぎてからが望ましいと考えた.