第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

肺循環・肺高血圧

一般口演29(II-OR29)
肺循環・肺高血圧 3

2019年6月28日(金) 10:30 〜 11:20 第7会場 (204)

座長:加藤 太一(名古屋大学大学院医学系研究科 成長発達医学)
座長:上野 倫彦(日鋼記念病院 小児科)

[II-OR29-01] 周産期侵襲は肺動脈性肺高血圧の発症、増悪の危険因子となるか:実験的検証

大下 裕法1,3, 三谷 義英1, 澤田 博文1,2, Jane. C Kabwe2, 大橋 啓之1, 淀谷 典子1, 大矢 和伸1, 坪谷 尚季1, 丸山 一男2, 平山 雅浩1 (1.三重大学医学部医学系研究科 小児科学, 2.三重大学医学部医学系研究科 麻酔集中治療学, 3.名古屋市立大学大学院医学研究科 新生児・小児医学分野)

キーワード:周産期侵襲, 肺動脈性肺高血圧, 閉塞性血管病変

【背景】周産期侵襲が遠隔期の肺動脈圧上昇に繋がる事を示唆するデータが知られるが、肺動脈性肺高血圧(PAH)、閉塞性血管病変への影響は不明である。【目的】周産期侵襲(低酸素刺激)がSUGEN低酸素(SuHx)処置PAHラットの肺高血圧と閉塞性血管病変を悪化させるという仮説を検証した。【方法】胎児ラットを出産前後の10日間の低酸素暴露により周産期低酸素ラットを作成した。7週齢ラットにSUGEN5416投与と3週間低酸素暴露によりSuHx処置PAHラットを作成した。周産期低酸素の有無に7週齢SuHx処置の有無を掛けた4群を作成し(N=40)、15週齢で血行動態解析(RVSP、AoSP、RV/LV+IVS)と肺血管形態解析(閉塞性血管病変・叢状病変の比率、中膜肥厚率)を行った。追加実験で、7週齢の健常ラットでの周産期低酸素の有無による血行動態解析と肺血管形態解析も行った(N=8)。【結果】15週齢のSuHx非処置健常ラットで、周産期低酸素は体重増加、生存率、血行動態、組織のいずれの指標にも影響しなかった。15週齢のSuHx処置ラットで、周産期低酸素が体重増加率(<.001)、生存率(60%vs100%、<.001)、RVSP(<.001)、RVSP/AoSP(<.001)、RV/LV+IVS(<.001)、閉塞性血管病変率(<0.05)、叢状病変率(<0.05)、中膜肥厚(<0.05)を悪化させた。SuHx処置前7週齢の健常ラットでも、周産期低酸素は体重増加、生存率、血行動態、組織のいずれの指標にも影響しなかった。【結論】周産期低酸素は、健常ラットに影響はないが、PAHラットの生存率、血行動態、閉塞性血管病変を悪化させた。この結果は、周産期侵襲がPAHのリスク因子となる事を実験的に証明し、PAHのエピジェネシスを介する機序を解明するモデルとなる可能性が示唆された。