[II-P45-01] 三尖弁腱索断裂をきたした、A群溶血性連鎖球菌による感染性心内膜炎の1例
Keywords:溶連菌, 感染性心内膜炎, 三尖弁腱索断裂
【はじめに】
A群溶血性連鎖球菌(group A streptococcus;以下GAS)感染ではその感染巣及び合併症により、多彩な臨床経過を辿る。しかし、感染性心内膜炎(Infective Endocarditis;以下IE)の原因となることは稀である。今回心雑音から三尖弁の腱索断裂が明らかとなり、最終的にGASによるIEと診断した一例を経験したので報告する。
【症例】8歳男児。1か月前から発熱があり、抗生剤内服にて短期間解熱するも内服終了後に再度発熱するという経過を繰り返した。これまで心疾患の指摘はなかったが、当院受診時に心雑音を聴取し、心臓超音波検査で重度三尖弁逆流を認めたため、精査加療目的に入院とした。入院時の血液培養2セットからGASが検出され、臨床的にGASによるIEと診断した。4週間抗生剤を投与した後も増大傾向を示す、可動性のある疣腫が残存したため、入院45日目に三尖弁形成術を施行した。術中三尖弁前尖に15×2mm大の白色付着組織を確認したが、離断した腱索周囲に反応性組織が増生した形態であり、病理学的にも疣贅は炎症細胞浸潤は目立たず大部分が石灰化しており、培養でも明らかな病原菌は検出されなかった。
【考察】小児におけるIEの発症リスクとして、先天性心疾患の存在が重要とされていたが、最近これを指摘されていない児のIE報告が増えている。またIEの原因菌としては黄色ブドウ球菌が一般的であり、本症例のようにGASであったという報告は世界的にも少なく、1940年以降で詳細な報告があるのはわずか15例、右心系に病変を認めたのはそのうち1例だった。なお、GASによるIEでは先天性心疾患を認めない例が多いという特徴があった。
【結論】小児領域では一般的な溶連菌感染症だが、合併症として感染性心内膜炎を生じうることが分かった。遷延する発熱を認めた場合、感染性心内膜炎を念頭に置いて、心雑音に注意を払うことが大切である。