[II-P45-06] ヒトパルボウイルスB19の感染による急性心膜炎診断の小児の1例
Keywords:ヒトパルボウイルスB19, 急性心膜炎, 網羅的PCR
【はじめに】小児の心膜炎・心筋炎で臨床的に多くの原因となっているのはコクサッキー・エンテロウイルスであるがHPVB19が原因となる心膜炎はまれで、重度の心筋炎に移行する可能性がある疾患であり、その一例を経験したので報告する。【症例】4歳女児【主訴】腹痛、呼吸苦【現病歴】入院2週間前より微熱と湿性咳嗽、入院2日前より38度台の発熱を認め、夜間に冷汗も認めた。入院当日、軽度の腹痛も出現し、近医にて精査し、炎症反応の上昇および著明な心拡大(CTR=74%)、心エコー検査では全周性に20-30mmの心嚢液を認めた。そのため、心筋炎などが疑われ当院救急搬送となった。搬送時、呼吸苦および起坐呼吸を著明に認めた。緊急心嚢穿刺ドレナージの適応と判断し、全身麻酔下のもと施行した。血性心嚢液180mlを吸引し、培養、細胞診を提出した。心機能は正常で、心筋逸脱酵素の上昇は認めず、急性心膜炎と診断した。心嚢ドレナージ後の経過は良好で、第7病日にはほぼ排液を認めずドレーンを抜去した。鑑別診断として提出した膠原病疾患は否定され、悪性細胞の出現も認めなかった。心嚢液の培養も陰性であった。第13病日に全身にレース様の発疹を認めたが、状態の悪化なく第14病日に退院となった。後に原因検索で提出した血液のPCRよりHPVB19が8.35*107copy/ml検出された。よって、HPVB19による急性心膜炎と診断した。【考察】HPVB19による急性心膜炎は非常にまれである。また、急性心膜炎と診断されていない症例もあると考え、生じる時期には、HPVB19感染に特徴的な皮膚所見などが出現せず診断が困難である。本症例では、症状改善後の発疹の経過および網羅的なPCR検査が診断に有効であった。【結果】HPVB19による心膜炎の1例を経験した。重篤な経過をたどることもあるため、原因の一つとして考慮する必要があると考える。