[II-P52-01] 乳児期の異所性心房頻拍に対する薬物治療の検討
キーワード:異所性心房頻拍, 頻拍誘発性心筋症, 乳児
【背景】乳児期の異所性心房頻拍(以下EAT:Ectopic Atrial Tachycardia)は薬剤への反応が良好と報告され、β遮断薬が使用されることが多い。乳児期は容易に頻拍誘発性心筋症(以下TIC:Tachycardia-Induced Cardiomyopathy)を合併し、β遮断薬の使用はより心機能低下をきたす危険性があるため、他剤の使用についても検討する必要がある。【目的】乳児期EATに対する薬物治療について検討すること。【方法】対象は2013~2018年に経験した乳児期(日齢0~48)EAT5例。TICの有無、病変部位、最高心房rate、使用薬剤とその有害事象の有無、初診から異所性P波消失までの時間について後方視的に検討した。【結果】5例中1例にTICが合併し、病変部位はcrista terminalisと推測された。最高心房レートは240/分で、左室駆出率は43%であった。β遮断薬、amiodarone、digoxin併用で心房rate 180 /分まで低下したがTICを脱しなかった。flecainideを追加して心房rateは低下しTICを脱した。その後β遮断薬を増量し、96病日に異所性P波は消失した。残りの4例中2例はcrista terminalis(最高心房rate 230/分、280/分)、1例はcrista terminalisまたはright pulmonary vein(同246/分)、1例はleft pulmonary veinまたはleft atrial appendage(同268 /分)が病変部位と推測された。4例中1例はβ遮断薬単独(異所性P波消失は2病日)、2例はβ遮断薬、ジゴキシンを併用(同6病日、15病日)、1例はβ遮断薬、digoxin、flecainideを併用(同24病日)した。全例に薬物の有害事象は認めなかった。【考察】乳児期EATは50-75%にTICを合併し、早期に十分な徐拍化が必要となる。今回の症例ではβ遮断薬を主体にamiodarone、digoxinでは効果が不十分であったが、flecainideを追加し、心機能の悪化なく十分な徐拍化ができた。【結論】乳児のEATは早期に徐拍化することが重要で、flecainideは心機能低下の有無に関わらず期待できる薬物の一つである。